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ラストレターのsomaddesignのレビュー・感想・評価

ラストレター(2020年製作の映画)
5.0
バックアップはとにかく大事

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自称シネフィルほど岩井俊二作品を敬遠しがちな気がする。かく言う自分も、ソフトフォーカス多用した思わせぶりなカットが多いわりに話がなかなか進まない。メランコリックな窓辺系or恋愛モノでしょ……って勝手な先入観のせいで作品群に全く食指が動いてなかった。「スワロウテイル」くらいしかちゃんと見たことないや。


やー、食わず嫌い。なんだちゃんと面白かった! 先入観や偏見を自省せねば

SNSやLINE、メールでコミュニケーションが事足りてしまう時代にあって、手紙のやりとりを使った物語が新鮮。手紙だからこそ起き得るすれ違いや触れ合いが面白い。

封書でコミュニケーションを図らざるを得なくなる事情もちゃんとあって、単にノスタルジー趣味になってないのが偉い。(自分はこれを書いてる最中にパソコンが死んだ。iPhoneで感想書くのすごい面倒😥)


緩やかに過去作「ラブレター」と繋がっていて、意外な場面で豊川悦二と中山美穂が登場。岩井俊二セルフオマージュ。
それにしても豊川悦二って改めてすごい独特。よく言えば記号的な演技に捉われない匂い立つ存在感だったり、何を言っても芯食った言葉に聞こえない。本音が伺い知れないセリフまわしが印象的。悪くいうと全部ぼぅ……やめとこう。

広瀬すずと森七菜が各々一人二役が見事。特に森七菜は高校時代のユーリと、現在のユーリの娘役。過去のユーリ役の時の引っ込み思案でなかなか思いを伝えられないキャラと、現代の思春期を持て余す高校生の描き分け
良かった。親子で顔は同じでもちゃんと別人格として描かれているっていうか。

神木隆之介と福山雅治の二人一役で描いた乙坂鏡太郎というキャラクターは、物語をみつめる岩井俊二監督の視点だろう。主には不在の姉・美咲を中心に、周辺部の人達の心の澱を拾い集めていくような。
作家がなぜ物語を作るのか、人はなぜ物語を語り継いでいくのか…岩井俊二監督が創作の原初的な衝動に立ち返ろうとしてみえた。
サラ・ポーリーの「物語る私たち」を連想しちゃう。

故郷・仙台の美しい風景をドローンを多用して余すところなく撮影。濃い緑の杜の都、豊かな水の流れ、朽ちていく校舎の対比がとても印象的。生と死、終わりと再生のイメージが遅々として進む復興の息吹にも感じられるような。


※バックアップを取ってあるとはいえ、HDDが壊れて交換。全記憶を無くしたパソコンを引き取り無事復旧できるか心配で、映画の感想どころじゃない。っていう一連含めて思い出に残りそう。




15本目
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