あかつか

モンスターズ 悪魔の復讐のあかつかのレビュー・感想・評価

モンスターズ 悪魔の復讐(2018年製作の映画)
4.5
米国では誰もが口ずさめる「リジー・ボーデン斧持って…」という童謡(マザーグース?)さえあるという。120年経った今でも事件現場となった家屋に観光客が押し寄せ、宿泊できるというのだから驚きである。当時から大衆紙の恰好のネタとなり、ポップカルチャーと化したところに、この事件のツボはある。

見張るべきは邦題とポスターの酷評っぷり。普段温厚な私だけどこれは本当に酷評されるべきだと思う。同じく女性ふたりがメインキャストの『モンスター』をもじったのか知らんが、リジーをモンスターとか悪魔呼ばわりするのってなんか違う気がするし、しかも「2人いるから、複数形にしてみました」ってことか? ポスターも悪質なコラみたいだし、「究極の犯罪スリラー!」ってコピーも疑問符。ちゃんと映画見たんか。それと予告編の「世界三大未解決事件」ってのも妙な感じするぞ。確かに解決はしてないけど。あと2つはどれとどれやねん。

本題。全編にわたって不協和音チックな音楽が流れる中、コツコツといった足音やチリリンといった食器の音が響き渡るのがとても印象的。その静寂さたるや、まさに「嵐の前の静けさ」で、いずれ起こる惨劇を予見せずにはいられない。

惨劇の後の逮捕、裁判のシーンでも「静けさ」が続く。そしてラスト近くに回想のように入り込む惨劇ingのシーンでも同様。こんなに静かな映画なのに、ずーっと見入ってしまったし、あっという間に終わった。

書物で読んできたリジー像は、そこまでの美女ではなかったと思う。主演女優がキレイだなーと思っていたら、『ゾディアック』の奥さんでびっくり。しかもその相方であるメイドのマギーは『パニックルーム』の娘で二度びっくり。大きくなったね…。つーか結構年齢差ないか?

調べる気もないけど、リジーボーデンとアイスのレディー・ボーデンは何か関係があるのだろうか。多分ないだろうけど、あったら楽しいのに。

〜〜〜

柳下毅一郎『殺人マニア宣言』によると、裁判後に新聞記者が事件の真相に迫った本を出版したところ、リジーはそのほとんどを買い上げて処分したという。お金の力で噂を封じ込めたとしても、大衆の欲望を止めることはできず、かくして“真相”は童謡となってアメリカ全土に広まることになり、事件への興味はいっそう尽きぬものとなったのである。
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