こたつむり

普通じゃないのこたつむりのレビュー・感想・評価

普通じゃない(1997年製作の映画)
3.7
普通にある普通じゃないラブコメディ。

“ぶっ飛んだ演出が多い”
そんな印象が強いダニー・ボイル監督ですが、ハリウッドデビュー作は“凡庸”と呼んでも差し支えない程度のラブコメでした。イギリスで大ブレイクしてもハリウッドでは新人…ということで、“自分流”を抑えたのかもしれませんね。

…なんて辛口な文章から始めましたが。
僕は好きなんですよ。
正直なところ、ニヤニヤが止まりませんでしたからね。最後まで「うひょ」とか「うはぁ」とか言いながら、存分に楽しみました。うへへ。

たぶん、監督さんと相性が良いのでしょうね。
凡庸と思える展開でも退屈ではないのです。
物語の着地点も予想できるとは言え、そこに至るまでが楽しいので気になりませんし、主人公の愚直さもヒロインの生意気さも感情移入の妨げになりませんでした。

それと音楽の使い方…というか選曲ですね。
イギリス人らしい雰囲気に満ちた曲選びに、思わずニヤリとしてしまうのです。やはり、曲と映像が上手く融合していると、映画鑑賞は楽しいものになりますね。ダニー・ボイル監督の音楽センスは類稀なるものがあると感じる次第です。

また、役者さんたちも光り輝いていました。
特にキャメロン・ディアス演じるヒロイン。
最初は生意気(だけどグンバツな美人)なのですが、物語が進むごとに可愛く見えてくるのです。僕が思うに、これは彼女の髪形に秘密がありそうですよ。序盤はガチッと整髪剤で固められているのですが、徐々に“やわらかい”形になるのですね。それが表情と相俟って、雰囲気が和らいでいくのだと思います。

また、物語中盤で。
隣人の前で“夫婦のふり”をする場面。
彼女は肩を露出しているのですが、そこから下は映されないのですね。勿論、肩から下も“素肌のまま”なんてことはあり得ないのですが、物語の展開からしても“何か”を期待させるものがあるのです。数分後に「は!俺は何を考えていたのだ?」と我に返るんですけどね…。とても大好きな場面です。

まあ、そんなわけで。
脚本自体は褒められないと思いますが(特に終盤の展開は強引過ぎる)監督さんの演出、主演二人の存在感、脇を固める俳優さんたちの演技、ロック精神溢れる音楽…と、ポイントは抑えている作品です。胃が痛くなる映画を観続けたあとに…ちょうど良いと思いますよ。まるで、胃薬のような作品ですね。
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