下手を打って祖国から逃亡し辿り着いたのは、殺されるよりはマシというだけの監獄のような場所。そこから脱出する報酬を受け取るために4人の男がニトログリセリンをトラックで運ぶ話。
こんなにおもしろい映画は観たことない。
人物の内面の描写が極端に少なく、感情の動きを捉えられない。一方でカメラワークや構図、カット割の妙で画面上に生まれる動きが豊富で美しい。表情の見えない人物が表現豊かに踊る様を見ているような不思議な感覚を味わった。
「あんまり揺らすと爆発するぜ」のニトロ運搬シーンに突入すると、「いくらなんでもそれは無理だろう」の連続で、観ている方が爆死寸前に追い込まれた。
全てのカットを緻密な計算の下に撮影し、丁寧につなぎ合わせて出来上がった作品なのではないか。最初から最後まで妥協の痕跡を感じない。原題の『Sorcerer』は「魔法使い」を意味するようだけど、まさに魔法で作ったような奇跡の作品だ。
