冷徹にシンプルにサスペンスを極めたクルーゾー版に対して、フリードキン版は狂気じみた魔的な作品だった。
国も境遇も全く違う男達の各々の事情と南米奥地の地獄をねっとり描く前半で、クルーゾー版とは明確に違う道を歩んでいく。
クルーゾー版とは違う物を作る為の新しい前半と、クルーゾー版を乗り越える為のニトロ運びの後半での撮影現場で命を賭けた狂気の『ガチ感』。リスペクトしつつも超えてやるという野心が映画に漲る。
後半は特に吊り橋横断の迫力が凄まじく、これをやり切るんだという映画作りの狂気がこちらにまで伝染してくる。
ひたすらドライだったクルーゾー版よりもこちらには湿った非情さがあって、味わい深い。
