cocomilk8o8

37セカンズのcocomilk8o8のレビュー・感想・評価

37セカンズ(2019年製作の映画)
4.5
『37 Seconds』

見はじめて、生理的に苦手な作品だなと躊躇したが、見終わって、素晴らしい内容に心打たれて感動した✨

37秒息をしていなかっただけで「普通」の暮らしが出来なくなったユマ。ずっと母一人子一人で、母親が彼女の世話をしている。ある日、彼女は息苦しい世界から飛び出し、成長していく。

1冊の心打たれる小説を読んだような作品だった。一つ一つに文字として心理描写が浮かんで来るような情緒的であり、しんどく胸をギュッと掴まれたようであり、優しく清々しさも残る良作。

こういう作品を制作出来る監督がいるんだと感動した。

見ようと思ったキッカケは、ブレンダン・フレイザーさんの新作がこのHIKARI監督の作品と知って、どんな監督なんだろうと、2019年ベルリン国際映画祭パノラマ部門観客賞・国際アートシアター連盟賞を受賞したこの作品がネトフリにあったからだ。

以下ネタバレ含む感想↓


















正直、実際の障害者が主役を務め、性の問題も生々しく表現されていて、生理的に苦手と言えば苦手で、最後まで見続けられるのかなと思ったが、どんどんユマの表情が活き活きと変わっていく様子にこちらまで気持ちが上がって楽しくなっていった。

友達になった風俗嬢やホームヘルパーとの友情、特に風俗嬢の舞が家出したユマに掛ける言葉「気が済んだらちゃんとお母さんに連絡すること」で泣いた。みんな何か傷というか、辛い過去があるからこそ、相手のことを深く考えられる優しさを持っている。たぶん舞の生い立ちもユマの気持ちが理解できることがあっての今なのだろう。
ホームヘルパーの俊哉も過去に何があるのだろうか。そこまでユマにしてあげるにはと想像できる。
そして、母親の恭子。ユマを思う気持ちが結果彼女を苦しめることになって、売り言葉に買い言葉で、ユマは母親に酷いことを言ってしまう。その時の母親の気持ち、ユマの言ってしまった気持ちを考えると泣けて来た。どちらの気持ちも痛いほど伝わって来た。

主役ユマを演じた佳山明さん、母親役の神野三鈴さん、風俗嬢役の渡辺真起子さん、ホームヘルパー役の大東駿介さんの演技がもう言葉では言い表せない程素晴らしかった!

最後、ユマが家に帰ってきて、彼女が書いたスケッチブックを見ながら神野三鈴さんが泣くシーンは、その演技と、窓からの光で反射して流れる涙の演出の素晴らしさに涙が止まらなかった。

凄い作品を見た。見れて良かった✨

この作品はHIKARI監督のパートナーであるスティーヴン・ブレイハットさんが撮影監督であり、今年日本で撮影・制作に入る新作『Rental Family(原題)』も二人が再びタッグを組むそうで、ブレンダン・フレイザーさん、柄本明さんなど出演され、内容も面白そうなので、ぜひ観てみたいと思っている😊
cocomilk8o8

cocomilk8o8