のん

37セカンズののんのレビュー・感想・評価

37セカンズ(2019年製作の映画)
3.9
生まれた時にたった37秒呼吸が止まったことが原因で、手足が自由に動かなくなった主人公・ユマは、友人の漫画家兼インフルエンサーのゴーストライターをしている。

母親は脳性麻痺を持つ娘を自立した大人と見なすことはなく、「一人じゃ何もできない子」として世話を焼くのが生き甲斐になっている。

才能に恵まれ独り立ちしたいと願うユマは他の出版社に漫画を持ち込もうとするが、どこも断られてしまう。
唯一持ち込みを許可してくれたのは、アダルト漫画を掲載している出版社だった。

セックスや人を愛した経験のないユマは、編集長に「リアリティがない」と言われたことをきっかけに、障がい者でもセックスができるのか、健常者と何が違うのか、確かめるため一歩踏み出していく...

監督のHIKARIさん、お恥ずかしながら知らなかったのですが、本作はベルリン国際映画祭で観客賞・国際アートシアター連盟賞をW受賞。

主役の佳山明さんは本人自身が脳性麻痺を持っており、100名を超える応募者の中から選ばれたチャーミングでエネルギッシュな方です。

自分には何ができるのか、生きている意味は何なのか、人を愛し愛されるとは難しいことなのか、世界に問いかけながら進んでいくユマは、やがて母親や家族の人生そのものを見つめ直すトリガーとなる。

始めは「障がいのある人がセックスを通して愛を知る」映画だと想像していたのですが、違いました。

「再生の物語」でもなく「お涙頂戴」でもありません。
ただの一人の女性の人生そのものでした。

出演する俳優たちも皆素敵な演技をされます。この作品を知れてよかったです。
のん

のん