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37セカンズのNightCinemaのネタバレレビュー・内容・結末

37セカンズ(2019年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「37秒がもし36秒だったら、私は」と話すシーン。彼女が「私でよかった」と答えを出すまで、37秒ぐらいだったのかなって何となく思います。

結構長く感じたけど、思いを巡らせているゆまちゃんにとっては短い時間だったんだろうと思う。夢を追う彼女の生き方がそこに表れていた気がした。

1秒が持つ奇跡のことを考えました。

37秒がもし38秒だったら、絵を描く大切な手がゆまちゃんから奪われていたかもしれない。37秒だった意味があるのかもしれないと思います。

この映画を観て、映画館を出た後、街の見え方が少し変わりました。人間っていいなというか。夜の飲み会帰りの楽しそうな人達、ビルの明かりなどが、今までと違って見える感じ。

お母さんが決めたラインを軽々と超えて、お母さんだけでは見られない景色まで見せてしまう所に、人が持つ無限の可能性を感じます。

お母さんの心配な気持ち分かるし終始ハラハラするんだけど(頼むから変な人とホテル行かないで~!とか)、出会った人達皆がいつの間にかゆまちゃんのペースに巻き込まれて、出会いが連鎖して最後には一番会いたい人に会えてしまった。

最初に彼女が「自分の力を試したい」と願わなければ、原稿を出版社へ送ることも、公園で漫画を拾うことも電話を掛けることも、ネオン街へ繰り出すことも、その後の激動の変化全部、起こることはなかった。

この映画に出てくるお母さんは世の中の常識とか思い込みに凝り固まった大人の象徴のようなもので、身体にハンデがあるゆまちゃんと健常者の母親、どちらが制約に囚われて生きてしまっているんだろうと感じた。

自宅がね、お人形があるせいかどよーんと暗く映し出される分、外の世界のまばゆさが際立つ。

ゆまちゃんは家と職場ではハンデを忘れることが出来ない。本来ハンデを感じるはずの外の世界に出たら、ハンデではなく彼女自身の可能性を見てくれる人達に出会う。

この映画、お母さん役の神野三鈴さんもそうだけど、渡辺真起子さん、大東駿介さん、板谷由夏さんと、脇を固める俳優陣の素晴らしさが半端ない…

渡辺真起子さん、大好き!この映画の役柄もほんといい女なんだよねー。色気があって自由で、優しい。大東さんが運転してくれるワゴンも安心感最強。

そして何がすごいって、冒頭の親子入浴シーン。親子のお風呂ってこんな感じだよなーという現実味が凄いの。でもやっぱり、娘が大きいから少しの違和感もちゃんとあって。

板谷さん演じる編集長のプロ意識みたいなものも当たり前だけど清々しい。ゆまちゃんのプロ意識も相当なものだけど。

最初と最後でゆまちゃんの表情が全然違うのも素敵だった。
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