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紅き大魚の伝説のめるのレビュー・感想・評価

紅き大魚の伝説(2016年製作の映画)
2.7
どうしても言ってしまわずにはいられないから一回だけ言わせて。
ジブリとディズニーを混ぜたようなかんじがする。だけど、それとは別で残念賞……かな。


ストーリーもキャラクターも世界観も演出も全体的に惜しい。決して悪くないのだが惜しい。

ストーリーは簡潔に言うと自己犠牲で捧げる愛と生と死の物語。この映画では助けて助けられてが繰り返される。それ自体は悪くないのだけど少しくどい。
もっと不要な部分をバッサリ削ればスッキリまとめられたはず。(チュンからオカリナを盗んで若返って逃げた白塗りの婆さんとかさ、必要?)

決定的に残念なのは、台詞に間がない、それぞれのシーンに余韻がなさすぎること。
シーンの一つ一つは美しくて良いのに、全体的にタメがない。余韻がないから薄っぺらく感じてしまう。

あと、生と死がテーマの一つのはずなのに子どもたちが悲しまないようにするためか死を"なかったもの"にする脚本はどうなのと思った。この切なさ全開の作風(テーマ)に無理矢理ハッピーを持ち込む必要はなかったんじゃないか?教訓は?


キャラクターもあまりにパッとしない。

登場人物の心情は分かりやすい方だけど、彼らの行動や仕草が"それっぽい"ものにしか見えないことも多くて入り込めなかった。儀式でチュンが水(らしきもの)を飲む仕草一つ取っても味気ない。
でも、チウが横たわるチュンに手を伸ばすけど躊躇ってしまうシーンは切なさが伝わってきて良かったかな。不器用だけど良い子だった。


世界観も壮大でいろいろな顔を見せる場所や建物がたくさんあって面白かった。
たとえ「千と千尋じゃん!」と思うところがあっても。
神話に出てくるような中国が舞台。人間界ではないらしいのだが、どうやら神でもないらしい。

私が聞き逃していたら申し訳ないけど設定が若干ガバガバだった気がする。
一定の年齢になった何人かの子どもがイルカになって人間界に行き自然の定理?を知るらしいが、それを結局あの世界でどう活かしてるわけ?
重要じゃなくても説明は欲しいし、喋る石像やクルミや面の首飾りやオカリナの役割も曖昧で"それっぽい"ものでしかない。


この映画にはクライマックスのようなシーンが2つもある。演出は壮大で美しく素晴らしいが、何度もドーン!ドーン!と来られてはお腹がいっぱいになる。

あと、そのシーンの重要さに関係なくわりと派手に魅せる演出が多くてメリハリが足りなかった。それが中国のアニメならではの良さならいいけど、それなりの奥ゆかしさが欲しい。

でも、古風なタイトルロゴやイルカたちが優雅に泳いでいる動く絵巻物のようなオープニングはオリジナリティーがあって好きだった。


つまらないわけではなかったので、いろいろブラッシュアップしたらなかなかの名作になったんじゃないでしょうか?
いずれまた進化した新作を見せてください!
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