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ジェノサイド・ホテルのesのネタバレレビュー・内容・結末

ジェノサイド・ホテル(2017年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

2008年11月に起きたムンバイ同時多発テロについて描いた作品。同事件について描いた他作品だと『パレス・ダウン』(2015)と『ホテル・ムンバイ』(2018)が思い浮かぶ。

他の2作と比べて今作で特徴的なのは、ジャーナリズムの在り方を描いた点。このテロ事件では我先にと報道を急ぐ各取材班が裏の取れない情報を流したり、ホテルにいる人間を危険に晒す情報を流したりした。またSNSやブロガーによる実況も行われ情報が錯綜した。
今作では利益の為に人命に関わる情報を利用したり、不確かな情報がテロリストを撹乱させたり、逆に生存者達を危険に晒したりする所を描いていたのが良かった。

冒頭とラストで描かれるホーリー祭のシーンはとても美しくメッセージ性が高いが、ホーリー祭はヒンドゥー暦の11番目の月に行われるがグレゴリオ暦では3月に当たるのでテロ事件が起きたグレゴリオ暦11月には恐らく行われていない。それとも結婚式で似たような行為を行う事があるのか謎。冒頭で街の人々が観ているのは季節外れだからなのかもしれない。製作者の勘違いという事は無いと思いたいけれど違和感があった。

思想の自由を認めながらもマッカーシズムが起こり、9.11後には報復戦争を行い自国内でもイスラム系への差別が起こったアメリカ。多神教のヒンドゥー教を信仰する者が多くてもイギリスの分割統治により宗教対立が起きカシミール紛争へと発展したインド。今日のイスラーム過激派が台頭した発端には西洋諸国の植民地主義、東西冷戦における代理戦争がある。
巻き込まれた一般人からすれば自分には関係ない問題なのだが、過激派のテロリストからすれば民主主義国であるならば、自分達が選んだリーダーが犯した罪は国民達にも責任があるという理屈。

ただ一つ言える事は、この監督の言う通り、過激派テロ組織にしろ、どこの国家の正義の戦争や粛清・反政府組織鎮圧にしろ、人種も国籍も思想も関係なく罪の無い子供達が巻き込まれるならどんなに正当な理由を並べ立ててもクソ喰らえ、という事だと思う。
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