ちょろもち

グリーンブックのちょろもちのネタバレレビュー・内容・結末

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

すごく良かった。すごく。

人種差別の酷さについては、言うまでもないのでその他について。

他人が勝手に作った枠の外にいる自分は、どこにもラベリングされえない自分は、じゃあ一体何者で、誰が仲間に入れてくれる存在なのか。シャーリーが雨の中で慟哭するシーンが胸に迫った。
レッテルが貼られることも苦しければ、何にも属せないことも苦しい。
苦しさを克服するには、柔軟に「自分」というだけで受け入れてくれる何処かを見つけるしかない。
ただし、受け入れてもらえたのはシャーリーの元々の誠実さや人の良さがあってのことだと思うので、あの幸せはシャーリーが自ら手に入れたものなのだと思う。

泣かせにくる演出はとても少なく、その点で非常に好感が持てた。泣かせにきていないのに、こちらが勝手に泣けてしまうシーンが多い。
映画は映画館で見るのが醍醐味とは思いつつ、この作品は独り言を呟ける環境で見ることができて良かったと思う作品。
チキンの骨は捨てても良いけど紙カップは拾いに戻るなどのシーンは思わず笑ってしまったし、悪態をつきまくっていたトニーがピアノに惚れ込んで以来ぶつくさ言いながらシャーリーを気にかけてるところなんかは「ああ良いやつだよなお前」なんて呟いてしまった。
そういうじんわりと「ああ良いやつだな君は」という気持ちがわく作品で、そのたびに泣けてしまった。

ラスト、クリスマスの日にトニーのために運転を代わり走り続けてくれたシャーリーが、トニーを送り届けて一人で家に戻るシーン、もう何を見なくても泣けてしまった。暖かく騒がしく「おかえり」と囲まれるトニーが映るたびに、美しい調度品に囲まれた豪華な部屋で一人で過ごすシャーリーを思って泣いてしまった。
雪が降っているからきっとシャーリーの部屋はすごく静かだろうなど、勝手に想像して更に泣けてしまう。
だからこそ、シャーリーが勇気を出してトニーの家を訪れたシーン、涙腺は大決壊を迎えた。トニーの妻ドロレスがシャーリーに「素敵な手紙をありがとう」と内緒で言ったシーンなんか、シャーリーの優しさが伝わっていたこと、ドロレスのチャーミングさ、いろんな感情がごちゃまぜになって、ああもうとにかく素晴らしいと頷きながら見ていた。こういうのをハッピーエンドと言うんだろう。

ハッピーエンドは大好きだ。