このレビューはネタバレを含みます
1962年、黒人の天才ピアリスト、ドクター・シャーリーと、イタリア系の雇われ用心棒(ドライバー)トニー・リップによる、ニューヨーク発、南部への演奏旅行の顛末。
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◆手紙と道
本作は、3つの場面を繰り返して話が進む。
街から街へ車移動。街での演奏。そして道中、トニーは妻との約束で何度も手紙を書く。
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若くして音楽の才能を見出されたシャーリーは、圧倒的な技術と品格をもって、自らの現実と対峙している。
道中シャーリーは、何度も後ろを振り向き語りかけてくるドライバーのトニーに
「道を見ろ」と訴える…
それは、その場しのぎの達人トニーを嗜めるようでもあり、シャーリーが自身の行く末を言い聞かせているようでもあり…
また、トニーはバックミラー越しに、苦悩するシャーリーの本質を見抜いている。
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旅の後半、トニーはシャーリーに、演奏旅行から帰ったら家族に手紙を書いてみてはと薦めるが、シャーリーは(彼の)兄は自分の住所を既に知っていると返す…
ハッとした。手紙は、
「自分はここにいる」と誰かに伝えるために書くものでもあるんだな…
孤独なコウモリ、シャーリーの心の叫びと重なるようで…沁みた。
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本作はまさに「旅」の映画だな〜と感じた。
随所に散りばめられた伏線の回収のされ方、緻密に組み上がったストーリーが辿り着く2つのラストシーン…ずるいくらい心地よいw
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◆現代に作られた、60年代の映画
招かれざる客(1967)とグリーンブック(2018)を続けて観てみた。
本作を60年代に作られた、現代の映画と対比して、決定的に異なると感じたのは、
時代に通底する価値観。
それは逆説的なのだが、作品意図の外から全体的に伝わってしまうからこそ違和感として受け取る類のもの…
改めて、
この象徴的な時代を借りて本作が描いているのは、ラベルではなく、1人の人間としての個人を捉えること、なのには違いない。
本作が提示する突破口の一つは絆か…
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・夜霧に霞むテールランプの綺麗なこと…
・シャーリーが笑うたび、幸せな気持ちが伝染したw
・わかるよ、複雑なんだろ…という受け止め方が素敵。
・奥さんの存在にも救われる。全然気付かなかったけれど、ERのサムだったなんて!なつかしい〜
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ルック0.5
シナリオ1.0
役者1.0
深度1.0