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ドンバスの2秒前のレビュー・感想・評価

ドンバス(2018年製作の映画)
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ワンショットで可能な限りシーンを完結させるという信念は舞台背景が深刻であるほど崇高だ。産院で扉を開けると院長が隠れていて、そのさらに奥の扉を開けると娼婦がいるというブラックユーモアでも、悲惨極まる地下シェルターを奥に奥に進んでいくシーンも根底は同じ。

略奪行為の罰を受ける場面が恐ろしいのは、棒で打たれるために自ら歩むを進めなければいけないから。また、街中に磔にされた兵士の周りには、老若男女問わず憎悪を募らせた人々が集まり、エスカレートしたそれは行進となり拡散される。『静かなる男』とは真逆の、ヘイトと嘲笑に満ちた最悪の行進。

場面と場面の切り替わりをシームレスに行う手腕が見事。花嫁の過剰な笑い顔が脳裏に張り付く結婚式のシーンも、複数のショットを切れ目を意識させないよう繋いで、あたかもワンショットであるような印象を与える。

それゆえに、ぶつ切りで挿入されたかのような、誰の視点かも定かではないウクライナ検問所でのバス空爆シーンにロズニツァの思想が強く刻印されているのではないだろうか。
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