LEO

峠 最後のサムライのLEOのレビュー・感想・評価

峠 最後のサムライ(2020年製作の映画)
3.3
計3回の延期を経てやっと公開された、待ちに待ってた作品。
黒澤明監督作品の助監督を務め、黒澤組のスタッフを引き継ぐように遺作シナリオ「雨あがる」で監督デビューした小泉堯史監督の作品なのでかなり期待してたのだけれど…。

まず冒頭の東出が演じる徳川慶喜による大政奉還の長台詞。
複数台カメラで7分間を超えるような長回しをしているだけあって非常に画は素晴らしいんだけれども、東出の演技が軽すぎて…。
彼はもともと声質が重くないんで、こういう作品の偉い立場の人の重大なシーンってのには向かないと思うんだよね。
ここは冒頭なのに眠くなりかけた。
さらに輪をかけて、役所さん演じる河井継之助を無下にし戦いを始める土佐藩士を演じる吉岡秀隆が…ひ…酷い…。
いや彼の役者としての能力を否定しているのでなく、こういう作品の偉い立場の人の重大なシーンってのには徹底~的に向かない!
おこちゃまが喚き散らしているような感じになってしまう。
役所さんの演技が堂々としているだけに可哀そうになるくらい。(ひょっとしてそれを狙ったのか?)

あと、本作は長岡藩家老の河井継之助という人物を主人公に描いた作品。小説は大ベストセラーになったそうだが、正直全国的に言えば無名と言えば無名。
そんな人の晩年も晩年、しかもその死ぬ前のわずかな時間だけ描かれても、大河ドラマで言えば12月に放送される部分だけ観せられてるようなもんで、前知識がない人にはキツイんじゃないかと思う。
かくいう自分も司馬遼太郎作品はいくつも読んできたが、恥ずかしながらこの大ベストセラーは知らなかったし河井継之助も知らなかった。
歴史好きを公言してるだけに恥ずかしい…。
だからなのかもしれないが、全体的に言えば、ぬる~っと終わっちゃったなぁという印象だった。

役所広司さんの演技は素晴らしい!
「何が」とはうまく言えないのだが、今回は特に本当に河井継之助として生きていた気がする。
本当は「ここのシーンのあの手の位置がね…」とかイチイチ言いたいのだが、長くなりすぎるのでやめる。
前長岡藩藩主を演じた仲代達矢さんは言わずもがなだが、ちょっと口元が怪しくなってきているようだから長生きしてください。
これが最後の師弟共演にならないことを祈ります。
松たか子さん・香川京子さん・田中泯さんも少ない出番の中で凄いインパクトを残されている。

全体としては満足!
だが東出が…吉岡が…。
凄いインパクトっちゃあ凄いインパクトなんだが…、別の意味で…。
LEO

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