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ジョーカーの都部のレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.4
喜劇役者アーサーの転落と覚醒を描く
──という、さながらヒロイック構図を逆手に取ったシニカルな悲喜劇。

社会問題を取り扱う事で社会的弱者に寄り添いを見せた後で、あの大オチでそれまでの全てを嘲笑うような突き放しの仕草は非常に痺れる。これはその発言の何処までが嘘なのか、その点を明白にしないからこその後味だ。卓袱台返しを通してしまう曖昧模糊としながらも切れ味バッチリな演出も癖になるし、精神疾患を患うアーサーの振る舞いが妖しい魅力に溢れているのはひとえにホアキン・フェニックスの演技力ありきであると言える。バッドマンのヴィランであるジョーカー像としての再現性や独創性には欠けるが、貧者の代表として祭り上げられた男が次第に暴走していく様相はえも言われぬカタルシスがあり、そういった映画としても見れてしまうのが肝かなぁという気もする。
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