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ジョーカーのmanamiのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
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人を笑わせたいのにうまくいかない。笑わせるのではなく、笑われてしまう。自分が笑うのもコントロールできない。そんなアーサーの悲劇。
「喜怒哀楽」という言葉があるけれど、彼は喜や楽の表情をたたえながら、抱えきれない怒や哀を吐き出していく。だから笑っているシーンが多くてもこれは悲劇だ。
ただし彼の身に降りかかる「かなしみ」には「悲」より「哀」のほうがふさわしい。より寂しく切なく苦しい。
出生の真実や、仕事や家族。哀しい。とにかく哀しい。これほどまでに哀しい人生があっていいのか。
心の支えだったあの人とのあれもこれも、全て妄想なのね。全く気付かず観てたから、私もアーサーと同じ瞬間に衝撃を受けてしまった。
タイトルからして観る側は、彼が後に悪のカリスマになると分かっているのに、それでも同情を誘うのに十分すぎるほどの人生ではある。
主演ホアキンフェニックスの表情や体型や身なりなどそれら全て、とにかく全身から発せられる負のオーラが凄まじい。今さらながらオスカーも納得の名演怪演。
だけど、バットマンの前日譚としてはどうなんだろう?「ある家族がゴッサムシティの暴動に巻き込まれて…」のくだりは、確かに「なるほど!」とはなる、なるんだけど、それ以上でも以下でもないな。バットマン作品への繋がりに関しても、今作によってジョーカーがより魅力的に見えたり、逆に恐ろしく感じたりするかと考えると、肯定しかねる。

87
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