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ジョーカーのnaoのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
1.5
フィクションなのに政治的な要素を介在させるのは良くない。撮影は素晴らしいが、ジョーカーの動機付けを児童虐待に任せる無神経さと(全ての児童虐待の被害者が精神に問題を抱えるわけでは無い)、監督が政治的では無いと公言しつつも「金持ちを殺せ!」というプラカードが劇中で登場したり、ジョーカーに共鳴する人々が金持ちなら誰でもという無差別攻撃に走るなど、意図的に無知だったのが気になった。このようにして日々のフラストレーションの解消を押し付けやすい階級社会の構造に求めることで共感を得るのは容易いからこそ、何を描くのか責任を持つべきだ。フィンチャーの傑作『ファイト•クラブ』と今作を分ける要素は完全にその点だと思う。また、ヒース•レジャーと比較してしまい、フェニックスの演技が一本調なのも気になってしまう。全体として受け入れ難い。既存の漫画の登場人物の内面に迫る、というアプローチでは、パティンソン版『The Batman』の方が圧倒的に成功していた。

繰り返すが映像は素晴らしかった。だからこそ勿体無いと感じる。
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