ホアキン・フェニックスの、笑い方から奇妙な動き、微妙な表情など怪演ぶりが凄まじい。光の演出や音楽も絶妙な不気味さ。
アメコミキャラクターのバックグランドに、社会や人間の異常性、狂気を投影して鮮烈に描いているのは斬新で面白かった。
アーサーの境遇はあまりにも辛いもの。不幸に不幸が重なり彼を蝕んで暗黒が支配していく。
環境が全てではないけど、様々な要因が重なってしまうと危険な思想に陥る可能性をこの社会がはらんでいると思わせられる。このような事件が起きた時にもちろん罪、悪とされるのは事件を起こした張本人だけど、本当にそれだけで片付けていいのかと問いかけられるようだった。
彼が訴えていたことには共感してしまう部分もある。やっぱりあんな平気で人を馬鹿にして傷つける人がいて、そういう人が実は「証券マン」だったり普通に生きている世界、不条理だなと思ってしまう。
そんな彼らも子供みたいに人に痛みをぶつけて日々の憂さ晴らしをしていたのかなとも思う。
ついにアーサーは殺人に手を染めてしまい歯止めが効かなくなってしまう。その目的は明確で、自分に優しくしてくれた人は殺さない、という己の善悪の判断に基づいている。
本人も言ってたけど、誰か話を聞いてくれる人、自分の存在を認めてくれる場所が欲しかったんだろう。
自分を食い止めるもの、制限するものは時に煩わしくても必要なもの。
生きる理由というと大袈裟で難しいけど、失いたくないものがあるということは自分の人生の支え、幸福の源泉がある証なんだと思った。
