ミートボーイ

ジョーカーのミートボーイのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
5.0
“悲劇も喜劇も、すべては主観”


ミスターガラスがこう言ってた。
「コミックはフィクションを通じて真実を語る」と。

コミックから飛び出した犯罪界の道化王子は、ホアキンフェニックスという名優の身体を乗っ取って、観客にキリングジョークを提供してくれた。

一握りの幸せと安息すら与えられたことのない、純真で不器用な男から、歪んだ、無慈悲なゴッサムの街は更にあらゆるものを奪っていく。

その度に彼は胸を切り裂くような声で笑う。まるで子供が悲鳴をあげるように。

そうして全てを奪い尽くされた彼は、もう笑わない。ただ静かに微笑むだけだ。

望んだものをついに一度も与えられることのなかった男は、夢にまで見た憧れの舞台に立つ。

そして彼を嘲笑するためにのみ用意されたその舞台で、ジョーカーは産声をあげる。

これ以上何も失うものがない人間の、そして彼を一度として顧みることのなかった社会への呪詛と憎悪の叫びを以って。


“きっと理解できないさ”