竜どん

ジョーカーの竜どんのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.5
King of villain ジョーカーの誕生譚が描かれた本作。
名優ジャック・ニコルソン演じるオリジナルに近いジョーカー、故ヒース・レジャーの遺した強烈なジョーカーとも全く違う新しい解釈のスーパーヴィランが生まれた。
本年度必見の一作。

主演のホアキン・フェニックスが凄すぎる。この「JOKER」に於いては彼以上のジョーカーは望めないと言って良いかもしれない。
弱者側に属していた筈のアーサーが些細な環境の変化と共に狂気をはらんでいく様を、危うく脆弱そうにありながらスタイリッシュにダンサブルに悪の象徴の完成形への道程を表現し切れたのは彼の演技があってのこと。
社会の異物としての自分に疲れ、信じていた最後の希望に裏切られた時、彼の目に映ったものは何なのか?
自身の弱さをメイクの下に塗り込めて、狂気の笑みを口元に、最後の良心(涙)は黒に変える。美しくも醜く哀しくも狂おしく「人間が壊れる」とはこういうことを言うのだろう。
人生は悲劇、いや人生は喜劇なのだ。
心が震える。


追記
バットマンシリーズにおけるゴッサムシティは空想上の犯罪都市としてアメコミ調の派手な描かれ方がなされているが、本作のゴッサムシティは政治の腐敗に倦んではいるが街の様相もそこに住まう人々もアメリカ一地方都市の様に感じる。
不景気・政治の腐敗・貧富の差、身近に感じることのできる一般市民(鑑賞者)の噴火寸前のマグマの様な鬱積したイライラ感・閉塞感。そこに投じられるアーサーという劇薬。自分達を苦しめる世界に反旗を翻す偶像の誕生に人々は暴動という名の鎌を振り下ろす。まさに現実社会に起こり得るかの如く「リアル」で、アーサーという一人の男の目を通したドキュメンタリー映画のようですらある。
悪の象徴ジョーカー・ゴッサムシティの誕生と共に正義の象徴(誰とは言わない)の誕生も伏線に張っているところが興味深い。
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