Mitan

ジョーカーのMitanのネタバレレビュー・内容・結末

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

予告編見ただけで、アーサーの惨めさに共感性羞恥で耐えられない……ってくらい、中盤まではとにかく救われない弱者の姿が描かれる。はじめは社会に、そして知人に、そしてたった1人の家族だと信じていた母親に……だんだんと周りから信じていたものがなくなって、ついにはすべてのものから「見捨てられた」アーサーが、純粋な悪にたどり着くのは腑に落ちるような気もする。

「僕は存在してるのか?」誰からも存在を認められなかった男が、偶然ではあるが一つの街をカオスへと導くその姿は、アーサーの言葉を借りると「悲劇じゃない、喜劇だ」。
劇中にも登場するチャーリー・チャップリンの言葉ですね。

「世の中の人は主観で善悪を決めてる」というのは確かに最もだけど、普通はそこに倫理観やモラルみたいなものが合わさってこの社会は回っている。でもその倫理観やモラルが欠如して、「主観」しか持たないジョーカーの存在そのものが「無秩序」なんだよね。「無秩序」っていうのはジョーカーにとってすごく大きなテーマな気がする。「ダークナイト」みてても感じたことだけど。

ホアキンフェニックスは言わずもがな素晴らしいし、軽やかでクラシカルな音楽と、アーサーの心の内を表現する不気味な音楽のコントラストも良かった。

終盤の完全にジョーカーへと変貌を遂げた後の方が安心感を持って観れてしまうというおかしな現象が起こってたな。笑
あ、あとcreamの名曲「White Room」の使われ方がかっこよすぎて痺れた〜〜

漫画や映画の中に登場する悪者って、最初からずっと悪者っていう性悪説的な感じだけど、そうではなくて、社会や、人が、生み出してるものなんだなあと改めて思う。

ヒース・レジャーのジョーカーが観たくて「ダークナイト」も同時期に観たのでその話になるけど、ハービー・デントもそうだよね。善良な市民(ヒーロー)が悪へと姿を変えるっていう。

現実の世の中に通ずるものがたくさんあった。危険な映画とされてるのも納得。
でも素晴らしい作品であることは間違いない。
Mitan

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