このレビューはネタバレを含みます
【恐ろしくも「ハッピー」な映画】
アメリカの映画館では入館時に手荷物検査が行われたそうですが…
入館者を調べてもたぶん無意味。作品を見たか否かに関係なく、きっと誰もがジョーカーにも悪役にも善良な市民にもなってしまうから。
周囲に理解されず、徐々に心身を削られるように追い詰められるアーサー。
ノートに書き付けた
「誰もが『普通の人』になれと言う」
彼を痛め付けるエリートの台詞
「キモいんだよ！」
彼なりに必死に貧困や病に立ち向かい、夢を持って生きているのに、一方的に否定される。相手の主観で自分が語られる。
形は違えど、これは今の社会に生きている人皆に起こり得ることでしょう。
国籍、職業、性別、障害、性的指向…挙げると切りがない「主観」が溢れています。
ここまででも十分辛すぎるのにその中で支えにしていた女性の優しさは幻覚だったとしたら…もう生きるの無理だわ…
その中で母親の病気、自分の脳損傷の原因がわかったことが唯一の不幸中の幸いだったように思います。
自分が「普通でない」ことは自分のせいではない、(おそらく)怪我によって引き起こされたと思えた、その原因を自分の手で消したことでアーサーに今までとは違う姿で生きる力が生まれた…母を殺した後、光の中で踊るシーンは今までとは違う、希望を感じる場面でした。
自分を知らないくせに正論をのべる有名人に風穴を開け、テレビの向こうの皆に自分の思いを叫び、報われない人々のヒーローになって(暴動で)クリスマスツリーのようにキラキラ輝く町を見つめる彼は幸せなのでしょう。
社会的にはもちろん絶対アウトなんですが、これからの彼は全てを自らの主観で語ることができる。他人に否定されても他人の主観に左右されることはない。
これってある意味ハッピーエンディングですね。
顔バレした他人には絶対言えませんが、ちょっと羨ましくもあります…
おまけ:イオンシネマさん、JOKERの前にITの宣伝するのマジでやめてください…
ピエロ怖い！！
