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ジョーカーのkuのネタバレレビュー・内容・結末

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

あまりジョーカー関連の映画観てないので詳しくなかったんですが。
イメージとしてはど派手なアクション物かなって思ってたんですけど、まぁ凄くいい意味でその考え払拭されましたね。
とても薄暗く静かに始まったかと思えば、だんだんとスポットライトが当たり、物語が進むにつれフォルテが掛かっていくように変化していく。

自分より上の立場の者が憎くなるってありますよね。誰しも、嫉妬や妬みなんて感情持ったことがあるかと思うんですけれど、アーサーにはそれが顕著に表れた。
他責思考が深く根付いて誰かが差し伸べてくれるであろう救いの手に縋ろうとして。
笑いものにされる事が嫌なのに、コメディアンになろうとする。
自分も誰かを笑いたかった。自分ではない誰かを。
自分も共に笑いたかった。自分を認めてくれる誰かと。

母親を大切にするという優しさがアーサーを成り立たせる善だった。
あれは優しさであり、愛であり、依存だった。
銃を否定する強さも持っていた。けれどその強さを保つには銃はあまりにも手に馴染み過ぎていた。
引き金を引けば壁に穴を開けることができる。たった一瞬で。
人を殺すことも出来る。
羨んでいた自分より上の立場の人間が情けなく自分に命乞いをする。
善も悪もこの世には存在しない。
共感が正義を作る。
支持があれば妬みも恨みも、そこから派生した人を殺すという行動さえも賞賛される。

憧れのコメディアンだったマレーを殺し、得られなかった賞賛を浴びる。ジョーカーにとっての初めてのスポットライトではないか。あれが、ずっと憧れてた賞賛の眼差し。人々の上に立つことを求められる。
今までの不安や焦燥を遥かに超える快感を得た。
ジョーカーとして人々から存在を認識してもらえる、待ち望んでいたものが憧れを壊すことで手に入った。
それが例え間違っている方法だとしても、アーサーの中でジョーカーを確立させてしまうほどの強烈な体験を否定することはできなかった。
綺麗事だけでは救えないものがあまりにも多い。

ラストのシーンではトムとジェリーを想起するほどのコメディー調から沸々と恐怖が宿る。
コメディアン・ジョーカーはこれからも笑いながら踊り続けるんだろう。

「人生はクローズアップで見ると悲劇、ロングショットで見ると喜劇」という言葉がありますが、まさにこの映画に相応しいのではないかなと思います。
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