このレビューはネタバレを含みます
笑顔で人を幸せにしたかったアーサー君は、いろんな辛い経験をしてブチギレちゃってジョーカーにジョブチェンジしました。
見終わった瞬間、「私、何を見たんだろう...?」と正直言って戸惑った。
サイコ・サスペンスとかサイコ・スリラーと紹介しているサイトもあるけど、言うほどの露骨な緊迫感や恐怖は感じない。でも、確かな引力があって引き込まれる。
アーサーは冒頭ではとても善良、と言うよりも自分に自信が無くて理不尽な目に遭っても反撃出来ないほど気が弱いのだけど、その辛く報われない人生を見ても何故だかか同情心が湧いてこない。
それは彼が時折見せる凶暴性のせいで、実際、アーサーは人を殺す度にドンドンと自信をつけて言動から卑屈さが消え、正面から人を見るようになり、ゴッサムの住人「らしく」なっていく。
この辺のホアキンの演技が本当に秀逸で、「自分は善良だと信じてるが実は誰よりも凶暴な男」をセリフ説明一切無しで観客に示してくれる。
そうして自己を解放し、階段で踊るアーサーのカッコ良さと言ったら。
正直、ゴッサムが燃える以降の場面は蛇足だった気もしないでもない。憧れのコメディアン・マレーを殺してエンドクレジットになったほうが余韻が残ったように思うけど、群衆の前で踊るジョーカーは『悪のキリストの復活』と言う意味なんだろうか。
アーサーが死んで、ジョーカーとして再生したと言いたいのかなぁ?
ただね、一つだけずーっと気になったのが、アーサーがトーマス・ウェインを実の父親だと信じ込んだこと。
アーサー、お前幾つだよ?
どう見ても40代半ば以上のオッサンの父親だったら、今70位になってないとおかしいだろう。実際、母親のペニーはそのくらいになってたし。
で、いくらお金持ちで若い奥さん貰ったのだとしても、10歳位の男の子の父親が70オーバーはいくらなんでもなかろうよ。トーマスの見た目も50後半から60代って所だし、まだ10代のトーマスと25、6のペニーが関係を持ったなら、その時点でペニーは犯罪者だしね。
母親のペニーがウェイン家に勤めてたのはざっくり30年前、で、その時にトーマスとこっそり付き合って別れた後にアーサーが生まれたなら、アーサーは最大でも30代前半じゃなきゃ計算合わない。
どう考えたってトーマスが父親の筈はないのに、何で信じたの?
あの辺の下りが、ブルース(バットマン)との繋がりを無理くり持たせようという制作サイドの都合に見えて、急に醒めちゃうんだよねぇ。
そんなわけで、評価は4.0です。
余談ですが、続編作る話が早くも出てるそうですが、これはこの1本で終わっといたほうがいいと思うなぁ。アーカム・アサイラムのシーンですら蛇足に感じたのに、ここからの続編じゃ、ただジョーカーのクライムムービーになるだけじゃん。