このレビューはネタバレを含みます
見ていてすごく苦しかった。
冷たい。あまりにも冷たい、アーサーの周りの人達が。看板を盗む子ども、理不尽な上司、市の役員の女性、電車のサラリーマン、、、
「アーサー」という1人の人間を見つめ、彼の話を聞く人は最後まで誰もいなかったように感じる。みんな、気味が悪いやつだとか急に笑いだすやつだとかそんなことを考えてただアーサーを嫌煙していた。母親も、結局ウェインさんしか見ていなかったんじゃないかな。
怖いのは、実際もし私がアーサーを見たら、映画で描かれた人々のように「あの人は気味が悪い」とアーサーを嫌煙してしまうと思ったこと。もしアーサーの話を聞く機会があったなら、ちゃんと向き合って話を聞こうと思ったけど。。。
彼は苦しんで悩んで行き詰まって行き詰まって行き詰まった末にJOKERというピエロになることで生まれ変わった。
アーサーは殺されたんだと思う。人々、不安、貧困、失業が複雑に絡み合う「社会」にアーサーは殺され、そして誕生したのがJOKER。
この映画を見終わった今の私は、そんな「社会」の一部になりたくない、とただ望んでいる。
悪人に善人の常識なんて「どうでもいいこと」だなぁ。犯罪のニュースがあれば、人々は加害者に対して「なんでそんな非道なことできたんだ」「殺された人が可哀想」とか言って攻めるけど、加害者にとってはそんな意見「どうでもいい」んだと今回思った。そもそも悪人はもともと悪人ではなくて、けど社会や誰かに踏み潰されて踏み潰されて踏み潰されて悪人は生まれてしまって、そんな悪人には善人の声なんて届かないし届いたとしてもその声で「申し訳なかったな」なんて思えないと思う。
上手く言えないけど、とにかく見ていて苦しかった。この映画を見てかなり心が動かされたしとんでもなく素晴らしい映画。ただ、JOKERはある意味救われても「アーサー」が救われなかったように感じてそれが悲しいので4.0です。
