ショタイト

ジョーカーのショタイトのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.6
この映画は劇薬だ。

映画の冒頭から中盤まで徹底してアーサーが不憫で孤独な様を描きながらも、観客に「でも現実にいたら多分関わらないよね」といった奇妙な感情を植え付ける。その奇妙で得体のしれない「なんとなく嫌」という感覚。これは現実の「偏見」に他ならないと感じた。

非常に印象的だったのは外で暴動が起きながらも、富裕層が劇場でチャップリンのモダンタイムスを笑いながら観るシーン。社会を蝕んでいくのは「攻撃」ではなく「無関心」だという強烈なテーゼ。

アーサーに足りなかったものはきっと承認なのだろうと思う。でも誰も彼を承認しようとしなかった。奇しくも彼を認めたのは、彼が拒絶され続けた社会だった。

今日の格差社会には無数のアーサーがいて、無数のジョーカー予備軍がいる。今の社会の風潮でいえば「努力が足りない。自己責任だ」と彼を責めるだろうか、そう責めることで社会は良い方向に向かっていくのか甚だ疑問だし、この映画を二元論的な善悪で捉えてほしくないと切に願う。


人生はクローズアップで見れば悲劇だが、
ロングショットで見れば喜劇だ。
ショタイト

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