ショタイト

オッペンハイマーのショタイトのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.6
予告編冒頭より
--------------------------
1人の天才科学者の創造物が
世界の"在り方"を変えた

その世界に私たちは
今も生きている
--------------------------
核兵器、こと原子爆弾の父と呼ばれるオッペンハイマーの伝記映画。
3時間を超える超大作だが、テーマ・配役・演技・映像・音響は、そのどれもが素晴らしく鑑賞はあっという間。
クリストファー・ノーラン監督の最高傑作だと個人的には思う。
(映画館の座席が固く、お尻はしっかり痛かった)


私も含め、この世界に暮らす多くの人間は【核兵器】を存在が自明なものとして生きている。決定的に在り方を変えてしまった時代の分岐点。作中では神から火を盗み人間に与えたプロメテウスを引用し、「人類は世界を破壊する力を手にした」と語られている。

核は叡智か、愚行か、その判断は個々人に委ねられるところではあるが、唯一の核被爆国の国民として、本作の鑑賞を勧めたい。また音響が非常に重要な作品であるため、可能なら映画館、さらに可能ならIMAXでの鑑賞を強く勧める。

一方で一般教養が試される作品であるといえるため、以下の知識は事前にある程度理解した上で鑑賞したい。

・第二次世界大戦のきっかけから終戦までの流れ
・ナチスドイツ、ユダヤ人迫害
・世界の左傾化、共産主義思想(いわゆる赤)の歴史
・東西冷戦
・核兵器の仕組み、原理

基礎的な知識がないと非常に難解に感じる作品だろうと思う。インターステラーのような難解さは実際にはなく、あくまで伝記(事実の羅列)であるが、恐らく聞き覚えのない単語や頻繁に入れ替わる時系列によって難解に感じてしまう人が多い印象。

あの時代の共産主義についてある程度の知識がないと、冒頭からオッペンハイマーがなぜ聴聞会にかけられているか理解できないし、ロスアラモスのシーンでテラーが「水素を使う(水爆のアイディア)」と語った際に「起爆はどうするのか?」「核分裂を使う」でメンバーが笑っている等、なかなか理解が難しいのではないだろうかと感じた。

繰り返すが物語自体に難解性はなく、どちらかというと「難解な演出」があるだけである。

残念だったのは二点で、ひとつは日本では繰り返し言われていることだが、広島・長崎への投下後の描写があまりにも少なく過ぎる。
*対してノーランは「オッペンハイマーの視点で描いた。他意はない」といったコメントを出したようだが。

別に「原爆の悲惨さがこれでは伝わらない!」と言っているのではない。表現の少なさがあまりにも不自然なのだ。例えば児童虐待を描いた作品で、暴力シーンが出てこない(痣で示唆する)ような類の不自然さ。多くの鑑賞者になり得るであろう米国人への配慮と邪推されても仕方がない。一部皮膚が剥がれる描写があるが、そこだけやけにチープ。
あの程度の内容でR15になっている理由も理解できない。

二点目はストローズ関連はもう少し圧縮してもらいたかった。冒頭にあっという間と書いておいてなんだが、内容的に2.5時間くらいになったのではないだろうかと思う。(ストローズ関連はとにかくしつこい、そのくせわかりづらい)


ブルーレイが出たら絶対買います。
是非、映画館でのご鑑賞を。
ショタイト

ショタイト