りっく

ホットギミック ガールミーツボーイのりっくのレビュー・感想・評価

4.2
幼馴染や仲の良い兄妹といった純粋無垢な男女の関係性から、身体が成熟していくことによって異性を意識し、その関係性が揺らぐ狭間で心と体と頭のバランスが崩れ、自分の性を、そして自分の存在を初めて意識した少女の途方もない彷徨いを描いた傑作。

堀未央奈と3人の青年のエピソードは、きらきら星ほかクラシック音楽をメルヘン調に流し続けているから中和されるものの、起こっている出来事は結構ハードで地獄そのもの。そこで物理的にも精神的にもからっぽな自らの身体に絶望し、そんな彼女に山戸結希は言葉を獲得させ、自らの代弁者として男たちに、そして世の中に矢継ぎ早に問いを投げかける。

そして何といってもロケーションが抜群にいい。東京湾近くの豊洲界隈の団地を舞台に、まだまだ巨大な建物を建設していくであろう無数のクレーン、無機質かつデザイン化された団地の中庭、階段、踊り場などなど、東京オリンピックで活性化するエリアをここまで効果的に切り取った映画を未だ知らない。それでいて閉鎖的な世界から外に出ても、渋谷を代表する人が蠢く街が彼女を飲み込み、無個性化させてしまう。

山戸結希は今までも身体性を題材に少女を撮り続ける作家であった。そこには刹那的な少女の神秘性や身体性が、映画というメディアを通して刻印してきた。だが、本作ではもはや無邪気に青春を謳歌することを許さない。その無垢さが許された刹那的な世界から、異性となった身体を持つ男女としてのこれからを、もがき苦しみながら何とか掴み取ろうとする意思を強烈に感じる。
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