【日本映画の今の問題を象徴】
公開前から、マカオ国際映画祭出品中止。ピエール瀧の逮捕からの上映中止粉砕、そして徹底的に煽った宣伝と、オンラインサロン系のギラギラした宣伝で話題になった作品。正直、不安でした。
実際観てみると、その不安は的中します。煽っている割には内輪で逃げている感じが強く、全く笑えない。滑っているのです。
今やポリコレ云々でお行儀の良い映画しか撮れなくなった時代に反発するように、暴力的でヤクザな演出があるのだが、どうも本物の血からは逃げているようだ。東京五輪が中止になる演出や、舛添要一をキャストに起用するのも単純なお飾りに過ぎずハリボテしかない。
それでもってはなから、『幻の湖』や原始人映画のようなカルト映画を目指している。バカらしくて何が悪いといっているから、福田雄一映画並みにタチが悪い作品である。
この作品がカルト映画にもなれないのは白石監督の真面目さが影響している。というのも、終盤の麻雀五輪シーンの演出だけはすこぶる面白いのだ。まるで『遊戯王』を観ているかのように、訳のわからぬ独自ルールにイカサマとイカサマのぶつけ合い、鋭いツッコミポイントの連鎖で、前半あんなにつまらなかったのがチャラになる程面白いのだ。
カルト映画というのは、全編面白いかつまらないかに吹っ切れてないとなれない称号である。これはあまりに惜しい。カルト映画になろうとして、あざとさが見え据えてなれなかった作品といえよう。
白石監督も園子温と同じ道を歩んでいて胸が痛くなりました。
そして、今の日本映画界が、こういった狙った炎上商法をチラつかせる作品が多くて頭がいたくなりました。福田雄一映画よりかは精神ダメージは軽いが、それでもあまり良い出来の映画ではありませんでした。