イルーナ

コルドロンのイルーナのレビュー・感想・評価

コルドロン(1984年製作の映画)
3.0
かつてディズニーランドのシンデレラ城にあったミステリーツアーの元ネタにして、80年代の暗黒期ディズニーの代表作(?)。
ここFilmarksの平均点も2.8と、ディズニー作品としては驚異的な低さ。
実際感想を探すと、作品のクオリティもお世辞にも褒められたものでないらしく、熱心なディズニーファンですら擁護しきれず匙を投げてる感じ。
そういうわけで、「一体どれだけ酷いのか?」という野次馬根性から鑑賞。

……あれ、思ったより悪くない?
予備知識を入れたり、期待値を下げられるだけ下げたおかげか、意外にすんなり観れてしまった。
作画の質や絵作りの美しさはさすがディズニーだし、竜から逃げようとする豚のヘン・ウェンのシーンは竜目線のカメラワークといいスピード感といい、おおっ!と思いました。
EDの、羊皮紙に描かれた絵巻物も素敵。
ですが、よく考えたらそれ以外手放しで褒められる所が見当たらないのも確か。
自意識過剰で文句ばかり言っていて、まともに活躍しない主人公のターラン。こりゃ人気出ないわ……
せっかく手にした魔法の剣もあっさり手放してしまうし、数少ない見せ場である自己犠牲を実行しようとしても、マスコット枠のガーギに取られる始末。
存在する意義がほとんどないエロウィー姫とフルーダー。
姫の特技は光の玉を飛ばして闇を照らす……ってえっ、それだけ?となりそうなもの。普通は攻撃なり他にも使い道用意するよね?
ブラックコルドロン探しのためにさらわれたらしいですが、どう見ても人選ミス。しかもあっさり脱獄されてるし。
フルーダーは吟遊詩人という設定なのに歌うシーン無し、嘘をつくと弦が切れるハープも結局自分対象でしかないから役に立たない。
予知能力を持つ豚のヘン・ウェンはキーキャラのはずだったのに、何事もなく妖精の国に保護されてそのままフェードアウト。
ラスボスのホーンド・キングもえ……ショボくね……?という扱い。カリスマ性がまるでないし、バックボーンも皆無……
作品自体のテンポがいいのでサクっと観れるのは高評価ですが、裏を返せばキャラの掘り下げが絶望的に足りないということ。
何というか、個人的には「これはひどい」というより「惜しい、本当に惜しい……」って感じでした。
時代が違っていたら掘り下げもしっかりして作りこまれていただろうに。王道か変化球、どっちつかずになってしまった感がある。

ちなみに本作、アニメーター時代のティム・バートンがコンセプト・アーティストとして参加しており、設定画を描いていたのですが……
「10年分ぐらいのアイデアを何から何まで出し尽くした」と語る通り、どれもダークでユーモラスな彼らしいものばかり!
このアイデアを一つも採用せず腐らせた当時のディズニー。才能の無駄遣いにも程がある。
いやー、もったいない。マジでもったいない。
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