ちろる

エレメンタリ ~鍛冶屋と悪魔と少女~のちろるのレビュー・感想・評価

3.5
その、不気味な鍛冶屋はひっそりと村のはずれに住んでいた。
自らの不幸を憂いながら生きるその男は、大きな秘密を隠していたのだが、孤独な少女ウスエが彼の鍛冶屋に迷い込んだ時、不気味な運命が動き出してしまう・・・

『バスク語』とはなんぞや?
まずこの作品を観るときに一番気になったその言語は世界的にもかなり難解だと言われている言葉らしい。
使用されているのは、スペインとフランスの両国を跨ぐバスク地方というエリアだそうです。
こちらはそんなバスク地方の民話を基に作られたダークファンタジーで、思った以上に残酷な描写が出だしから多くて、不気味。
でも、私ギレルモ・デル・トロ監督の作品をはじめ、スペインのゴシックホラー、結構好きなので、この不気味さもワクワクして引き込まれていきました。

村の果てに住む、鼻つまみ者と、少し風変わりな少女の出逢いという構図は、フランス民話の「美女と野獣」に少し似ているのだが、実際はそう美しいものではなくて、2人の間には忌まわしき因縁があったのだ。
それでも、恐ろしき鍛冶屋がウスエに優しく接すると、ウスエも彼への警戒心を解き、鍛冶屋の秘密をもすんなりと受け入れる。
それにしてもまだ年端のいかない幼いウスエが、悪魔を楽しそうに拷問するという映像は、パンチの効いたもので、さすがスペインのダークファンタジー。
ちなみに悪魔がこうやって堂々と登場する映画ってのもアニメ以外で観たことがなかったのですが、「これぞ悪魔やないかぃ!」と言いたくなるほどまんま悪魔のビジュアルでした。

大人たちの愚かしい行動や、ふとした言葉が少女を不幸にし、追い込んでいくわけで、幼いウスエが自らを追い詰めて行くのが切ない。
例え、彼女を孤独にしたのが鍛冶屋だったとしても、悪魔も恐れるほどの剛力の鍛冶屋だからこそ少女が救えたわけで、なんとも皮肉。

悪魔は恐ろしいものには変わりないのですが、悪魔とは悪そのものではなく人間の持つ悪の魂の香りを嗅ぎつけて、地獄へと誘う存在なのだということが分かる。
悪魔のせいで人間に悪が生まれるのではなく、悪は人間の中で勝手に生まれるものなのだろう。
悪魔は確かに恐ろしい存在ではあるものの、サルタエルのような悪魔がもしいるのならば地獄にも救いがあるような・・・

真っ赤に染まった地獄の映像もなかなかのインパクトありましたし、ラストまでどうなるのか目の離せない流石のスパニッシュファンタジー。
これをハッピーエンドと呼ぶのか否かは分かりません
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