春花とおく

運び屋の春花とおくのレビュー・感想・評価

運び屋(2018年製作の映画)
4.2
時間とお金は等価値か、を考えさせる物語(実話ベース!)。時間の所は、時間よりも家族や愛する者と一緒にいることやその記憶とも言えるが、最も広く取ればやはり「時間」だろう。

物語からすると、アールはこれまで妻や家族との時間を蔑ろにしてきたことを埋め合わせようとお金を求めた。しかし時間は不可逆に流れ続けるもの。お金で取り繕う事は出来ても、過去に渡っての修復は出来ない。その最たる例が妻の死である。そこからすると、やはり時間はお金よりもずっと高価値だ。時間は何物にも代え難い。

簡単に思考するだけでわかる事だ。しかし、今就職活動に励む自身としては、改めて考えるべきだろう命題である。これから僕は一日の半分を仕事に捧げ、金を得る。果たして僕は、何のために働くのか。働きたいのか。こうした思考を促してくれる鑑賞体験は幸福なものだと思う。

だが、まるで車のCMかと思わせるドライブシーンの映像美や音楽の軽快さなど、観ていて純粋に楽しい映画でもある。


アールが悪気なく「タコス野郎」「ニガー」と差別するが、コレが気にかかった人はいるだろう。しかし、これをもって当時のイーストウッドを差別者とすることは出来ないし、アールとしての彼を同じくすることも出来ない。なぜならアールは、まさにナチュラルに差別をしているからで、そしてここからが大事なのだが、指摘された時に改めているからだ。恐らくアールの差別描写は、彼が90歳の、戦争経験もあるような高齢であることを印象づけるためであろう。まさに時代が違う。その時は差別が差別で無かった。当たり前が違った。だから悪気は無かった。でも彼は意固地になることなく、被差別者の声を受け入れた。ここで自分を変えられるかどうか、それが大事だと思う。時は勝手に過ぎる。場所を変えれば文化も変わる。性には超えれぬ壁がある。人は個々で違う。違うことを、わからないことを、わかろうとも受け入れようとも、挙句は考えもしない凝り固まった人間こそが真の意味で差別者になるのだろう。


100歳まで生きようとするのは99歳の者だけだ。←凄い好き。2001年生まれだからと、100歳まで生きたいと本気で思ったのが懐かしい。ちょっと無理そう。。
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