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61年目の約束のdalichokoのネタバレレビュー・内容・結末

61年目の約束(2018年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 初めてマレーシア映画に接する機会となったが、実話を映像化したというリアリズムを超えたダイナミズムに圧倒された。その美しい情景はボリウッド映画に近い。作られたものではない、本当の風景が映画に納められていると思わせる。(もしかするとかなり合成しているかもしれないが・・・)
 いくつか学習することがあるが、まずは日本軍だ。もともとイギリス占領下のマレーシアが第二次世界大戦で日本軍の占領下となる。この前半の過激表現は『セデック・バレ』が思い起こされる。
 戦後の貧困の中で、一攫千金を狙う男と残された家族の物語だ。長い長い物語。
 主人公の妻チェ・トムが死に際に、孫に依頼した夫(孫からすると祖父)の生存を確認するよう依頼する。その中で夫オトマンの苦難の人生がこの映画の全てを物語る。戦後、船員として沖縄から香港、マダガスカル、アイスランド、イギリスへと旅をするが災難が重なる。
 奇跡的なのは、チェ・トムとオトマンの息子オマーがイギリスの大学に学んだときに、実は死ぬ前の父親に会っていたのだが、オマーも老いて記憶がない。認知症となったオマーが最後に大きな軸となる。
 オマーは父親オトマンの帰りを待っていた。実はオトマンもマレーシアの家に帰ろうとしたとき、妻のチェ・トムが別の男をダンスをしていてそれを見たオトマンは再び旅に出るという展開。
 複雑な心理と偶然が運命を狂わせる。
 こうした構成のしっかりした映画がネットフリックスを資本として製作されることに驚く。日本映画はきっともうこのような映像を提供する資本を持ち合わせていないだろう。古き日本映画の素晴らしい作品を見てきたものとして、このような映画が映画後進国ともいえるマレーシアで製作されていることを素晴らしいと思う。

最後に、この映画にはいくつか嘘がある。まず1953年、沖縄に船がつくがあの頃の沖縄は正確には日本ではない。そして酒場かどこかで1953年にゲーリー・クーパーのポスターが飾られていて『西部の人』という映画なのだが、この映画は1958年に作られた映画なので時代考証が違う。
 まあこうしたことは映画に時々見られることなのだが、こうした粗を消し去るほどの傑作だと思っている。
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