Masato

薬の神じゃない!のMasatoのレビュー・感想・評価

薬の神じゃない!(2018年製作の映画)
4.2

本国でも日本でも話題となっていた中国映画で「陸勇事件」という実話を基にした映画。白血病患者のための抗がん剤を安価なインドから金稼ぎ目的で密輸していたクズ男は、次第に患者を救う目的へと変わっていく義賊の物語。

すげえいい映画だった。仰々しい演出もなく、コミカルで軽快でも重々しくてシリアス。分かりやすくて文句なしのヒューマンドラマ。こんなゴリゴリ犯罪の反社の内容をよく当局が許したなと思ったけど、ヒールが政府よりもスイスの製薬会社にしてたり、すでに医療改革が起きて解決済みだから許されたんだろう。

まあでも政府がちゃんと対処しなかったからこういうことが起きたわけだし、描いてないにしても遠回しには中国政府を批判していると思う。ここまで大事にならなければ改革が起きないのかという。そうやって大事になるまで待っていたらその間に何人の命が失われるか。それまでの「命の繋ぎ手」だった義賊の男は犯罪者なのか?

私は日本の安倍晋三の殺害事件、統一教会問題を思い出した。人を殺めた点では大きく異なるが、あそこまで大事にならないと国は詐欺のカルト集団を糾弾できないのか?というよりも国がカルト集団そのものだったという。社会からこぼれ落ちて誰にも相手にされなくなった人間が犯罪の道に誘われるのは至極当然だ。だからその前に国は救いの手を差し伸べるべき。

シンプルなヒューマンドラマながら、全員が守られない社会でも平等に司法が働くなかで人を助けるにはどうすべきかというのをひたすら考えさせられる難しい内容。

ダメ男が白血病患者の現状や経済状況を目の当たりにして段々と変わってゆく。義賊の物語は本当に万国共通で好まれる。誰よりも人間臭い。どの国でもみんなどこかで法では解決できないこともあると感じている。そんななかで法を破ってまでも人を救おうとする人を見るということは、共感を得るのだろう。

主役の人の演技最高だった。変わりっぷり凄まじい。
Masato

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