都部

クワイエット・プレイス 破られた沈黙の都部のレビュー・感想・評価

3.2
前作からのたしかなスケールアップを感じさせるのは変わる変わるな舞台での派手な攻防の数々で、一瞬の油断が命取りという状況設定のスリルは前作から大きく削がれているものの、劇場体験特化型のホラー映画としての振る舞いまでは損なってはいないように思える。

失われた存在を補填するかのように、前作からの進歩を感じさせる子供達の活躍が主軸として描かれるのは続編ならではあるが、そこに介在する感情の機微を訴えかけるドラマが本作では語られないので、感情線が読み取りにくく絵面優先の作劇として足早に纏められているのはしかし問題か。わざわざ息子と娘の見せ場を別々とする為に脚本上で分断を図る流れはかなり強引であるし、この分断を巡るドラマはなんと最後の最後まで解消されることなく、成長を明示する『討伐』という形でさらりと一緒くたにされて幕を閉じるのは幾らなんでも雑すぎる。

この特定のシチュエーションを見せる為にキャラクターが突き動かされている微妙な感覚は拭えず、前作は語り部の家長としての使命感からの行動という形でかろうじてドラマを結実させていたが、本作に関しては完全に登場人物達のドラマがタチの悪いクリフハンガー以下の扱いである。

『アトラクションのような映画』という揶揄が最近よく交わされるが、本作は正にそう称するべき映画で、その時その瞬間の楽しみは得られるが形骸化したドラマから得られるものは何もないという意味で高評価を得るには多くが足りない一作となっている。
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