slowbird2000

蜜蜂と遠雷のslowbird2000のレビュー・感想・評価

蜜蜂と遠雷(2019年製作の映画)
4.0
石川慶監督『蜜蜂と遠雷』WOWOW録画初見。評判の映画を遅ればせながら観ました。

まず黒い馬の映像が素晴らしい切れ味。あの紺色がぐっと明度を落としたような黒はどうやって出すのだろうか。その他のシーンも映像が素晴らしい。あと印象的だったのは、浜辺でピアノコンテストの若者たちをとらえた映像。何ということはない浜辺の光景なのだけれど、縦横に人物をとらえたカメラワークとそれによる映像が溌剌としていて、それで底流に不安が流れるようで見事。

最近の日本映画では珍しいこうしたカッチリとした映像が描く、ピアノコンテストの音にかける若者の姿勢がとても気持ちの良い映画。

もう一つの主役はもちろん音。細かなタバコの火のチリチリいう音から、雨や風の自然音、そしてホールのピアノの繊細でそしてダイナミックな音を見事に描いている。こうした音の拾い方は、画面で描かれる音楽の天才たちの、その天才たる所以である鋭い聴覚を観客にも体感させるような描写なのだと思う。

物理を学んだ後、ポーランドの映画大学へ留学したという石川慶監督、ここでは音を分析し再構成することで見事に音楽映画を描いていたが、他の作品も観たくなりました。
slowbird2000

slowbird2000