みそ

蜜蜂と遠雷のみそのネタバレレビュー・内容・結末

蜜蜂と遠雷(2019年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

世界が鳴っている(娘)
あなたが世界を鳴らすのよ(母親)

雨の音に導かれ、
雨の音を連れながら
本番の舞台へ黒色のドレスで向かう。
16歳の天才からは
「おかえり」と、一言だけ。
この台詞が作品をひとつの円に仕上げる。
7年前の掛け声と共に表舞台へと歩を進める。

栄伝の笑顔には、いちいちやられてしまう。
彼女の笑顔の裏を少しばかり知ってしまっているから。
マサルとの再会も、風間との出会いも。

ただ砂丘のシーンは素直に笑顔を感じることができた。
砂丘のシーンは名シーンだった。
天才と、そうでないものの差。世界。
ひどく明石に同調したのを覚えている。
わたしにも分からないですよ、と。

明石と同調したのは、あともうひとつ。
マサルの最終演奏を聴く彼女と出会ったとき。
観衆どころか、世界が祝福していると。
明石は天才たちに出会い、終わりと決めた音楽に対して前向きになれた。
やっぱり、ピアノが好きなんだ、と。
そこですっかり感情移入しちゃったところで、彼女は泣き出す。
私は、明石の目で彼女の涙をただただ見ていた。

彼女の最終演奏が終われば、拍手の雨が訪れた。
これは雨の作品だった。

風間が登場するシーンは、全部いい。
世界が鳴っている、も
お姉ちゃんが世界でただひとりでもピアノの前にいると思う、も
無音鍵盤、も
おかえり、も

約束と覚悟の話。
互いが互いを必要としていた。
まるでギフトだった。
みそ

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