かがわ

蜜蜂と遠雷のかがわのレビュー・感想・評価

蜜蜂と遠雷(2019年製作の映画)
3.6
原作読んで観たので、よくぞ一本の映画にしたなと。その時点で最高。ただ、ここまで変えるならもっとテーマを一本絞らないとぼんやりするなーと。音楽がとにかく素晴らしかったのと松岡茉優が圧倒的なんだけどそれに頼らないところがこだわりを感じてよかった。

正直、原作に関しては恩田陸という人の作品として物語の設計図を読まされてるような気分になっちゃうので、得意ではないです。

子供の頃からの英才教育に加えてかけてきた時間とお金。それを加味しても報われないかもしれないという「あっち側」と、高島明石、そしてそれを撮る一般人の目線からの「こっち側」の描写に 関しての描写は、キャラを削った分難しいのによくぞ高島明石周辺で解決したなと。(テレビスタッフがブルゾンちえみなのは最初は激怒ポイントだったけど、ことのほかよかった。)

ほんとにもったいないのは、「聴く」描写が少なかったこと。どうしても「演奏」のシーンは映画化するにあたっての白眉だと思うのだけど、風間塵がもたらしたギフトを1番に説得力を持って描けるのはやはり「聴く」側の描写だ。

風間塵の天才性、タイトルの直接的な解釈。英伝亜夜のトラウマとの戦いなど、ここで語らねばいけないことをなんとかハイブリッドして頑張った感じ。それに対して文句を言わせない勢いがあるのがやはり音楽だと思う。課題曲の春と修羅の同じ旋律の繰り返される二次予選の撮り方は圧巻だった。だってキャラによってカデンツァ以外もめちゃくちゃ違うんだもん。最終の協奏曲もしかり。

英伝亜夜の描き方が松岡茉優によってより人間らしさが増幅されてるのがプラスになっていました。原作はもっと天才たちの戯れだった。その差が嫌かどうかは個人によるでしょう。僕はもっと天才でも良かったのではないかとも思います。
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