りっく

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密のりっくのレビュー・感想・評価

3.8
荘厳なセットや豪華絢爛な美術で飾られた空間とは裏腹に、仰々しい音楽で彩られる醜い人間模様と軽薄な家族関係。都合が悪くなれば家族や血縁といったワードを振りかざし、寵愛を受けた部外者に詰め寄る家族たちのフォーメーションの完璧さよ。ジェイミーリーカーティスとトニコレットの佇まいをはじめ、まず戯画化された滑稽なキャラクターたちを嬉々として演じる役者の理解力が実にゆかい。

物語も探偵ものというジャンルから始まり、クセのあるキャラクターたちにねじ曲げられていくものの、最終的にはジャンル映画として帰結するあたりもスマート。非常に混み入った複雑な話を、ミスリードしながら一度解体しつつ語り直し、それでいて物語の芯となる部分は一貫しているために、観客も翻弄されながらも混乱することはない。ラストの鮮やかな立場の反転によるカタルシス含め、どこか懐かしい手触りも感じられる一級品のエンターテイメントだ。
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