ひなもし

僕たちは希望という名の列車に乗ったのひなもしのレビュー・感想・評価

4.1
とても面白かった。始めから終わりまでずっと緊張感をもって見続けた。
ひとつの国が分断されることの怖さを又味わった。何度かこのテーマの映画を見てきたが、今回はエリート学生の側からの心理描写が見事だった。
自分自身だったら…と想像しながら見続けた。テオやクルト、レナ、エリックに自分を置き換えた。エリックの態度に疑問を感じたが、次第に彼の背景が明かされる。
裏切りや密告をする人物を悪いと決めつけて、この映画はハッピーエンドだったと片づけることは短絡的だ。生まれや育ちの背景によって、自分や家族を守るためにどうしようもなく仲間を裏切る場合もある。エリックやテオの家庭環境や親の苦悩を知ることで、深く考えさせられた。実話をこのように描いた監督の手腕に感心した。
第二次世界大戦は、子や孫にまで影響を及ぼした。それは現代にも続いているのかもしれない。改めて戦争の恐ろしさを知った。
過去の日本も言論の自由のない国だった。ロシア、北朝鮮、中国など、今なおそうした国は存在する。国民は水面下で苦悩していることだろう。裏切り、密告、忠誠心…このように国民を支配する国の制度が悪いのだ。人間は弱い。この制度を作ることで、ピラミッド型の支配がうまれ、監視社会で人々は追い詰められていく。
列車に乗って西側に行った学生は強く立派だとは思った。しかし、行かなかった行けなかった4名の学生をダメだと片づけることはできない。
ドイツでは、未来の教訓とすべき現代史を題材にしたこのような映画が盛んに作られているそうだ。日本は分断されなかったけれど、未来は安全だとは言い切れない。この危なっかしい世界情勢の中、たくさんの史実を知り学ぶことは意味がある。私たち国民が、国を監視しなければならない。
ひなもし

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