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象は静かに座っているのdeadcalmのレビュー・感想・評価

象は静かに座っている(2018年製作の映画)
4.4
フー・ボー監督のデビュー作にして遺作。タル・ベーラリスペクトらしい長回し中心の4時間の大作。

中国の地方都市を舞台に、4人の男女が抱えるそれぞれの生き地獄と逃避。それぞれの事情から急激に居場所を失っていく、時々交錯する彼らの姿をザッピングしながら、とある一日の朝から晩までを描く。
この世の生き苦しさを濃縮したような、誰も彼もが他人に理解を向ける余裕を持たない救いのない世界観で、主人公たちを4時間かけて丁寧に丁寧に追い込んでいく。重苦しい長い沈黙のシーンなども多く非常に見ていてしんどい、が、だんだんとその街の空気に没入していく。

舞台の街はけして見栄えの良いとは言い難いうらぶれた土地だが、映像はずっと美しい。メインの人物にピントを合わせ続け、周囲のものをぼんやりとしか描かないなど、いくつか特徴のある撮影。時々挟まれるBGMがかなり好み。

いろいろ印象的なシーンはあるけれど、ジンが老人ホームを訪れるシーンの絶望的な暗がりが強烈に焼き付いている。

終盤の病院のシーンあたりから一層厳しさが加速し、満身創痍に傷ついた彼らはいよいよ長い長い映画の終わりに向かう。その後の彼らのことは想像に任せられる。ぼんやりとした不安とあまりに覚束ない微かすぎる希望だけが描かれる。
ラストシーンでは、途中のセリフで一回(たぶん)言及されてただけの要素が活用される。そこを寝てた人は残念。

※DVDに入っていた予告編、「中国の田舎町で〜」みたいな紹介文だったけど、終盤に出てきた駅が石家庄北駅で、石家庄市はさすがに田舎町とは言えないのでは、と思った。
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