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象は静かに座っているのkoshijinのレビュー・感想・評価

象は静かに座っている(2018年製作の映画)
3.9
牯嶺街少年殺人事件と同じく、時間を目一杯使って淡々とエンディングに向けてコマが進んでいく。大きく異なるのは映像美の観点でこちらは終始灰色に霞がかった町並みをさらにぼかしてぼかしてまるでハンディで撮影したかのような素人味が随所で出てくる。当然、嫌味は全くなく美しい。
希望など無い。かと言って、悲劇のヒロインを語れるほどドラマチックなものでは無い。ただ誰かのせいにして気を紛らわすしか無いようなどこにでもある身近な絶望が丁寧に切り取られている。この社会への不満を怒りを主人公がそして同世代の監督が叫んでくれたことに情けなくも救われてしまう。
いかにもYMOが創りそうな無機質な電子サウンドも非常に世界観を構築している。
4時間弱とは1本の映画として長い部類に入るが、一人の映画人を理解するにはあまりにも短過ぎる。合掌。
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