おーもり

ウエスト・サイド・ストーリーのおーもりのレビュー・感想・評価

3.8
超絶クオリティの歌とダンス。
当時を再現したNYの街を巻き込み、主要登場人物だけでなくて、より街やそこで暮らす人々といった凄く視野が広がった話になった。
舞台演目では限られたスペースで一度に舞い踊れる人数にも制限があるが、映画ならではの強み。
圧倒的な規模と、ショットの切り取りで魅了する。
オリジナル版を、当時子供の頃に劇場で観ている母を連れて観たが、大変満足していた様子。

オリジ版では、マリアは口でさんざん言うだけで自分は何もせずトニーに任せっぱ。
トニーもトニーで、恋に盲目で周りが見えていない。
そんな、なんかモヤッとする点を、うまく辻褄が合うように補正・補足をして、初めて見た人も飲み込みやすいストーリーに綺麗に整った。
加えて現代の価値観に合わせたアップデートも抜かりない。ドク変わりのバレンティーナの立ち位置も良い。
なによりチノのキャラの味付けがめっちゃ良かった。

登場人物達が超絶ダンスする時は、イキリ散らかしてかましてる時なので、
ダンスのキレが増し、大技が出れば出るほど「おっ!かましとる、かましとる!」って面白かった。

シャークとジェット、ジェットは本当悪ガキの集まりって感じが増した。シャークはプエルトリコ出身達の町内会的な自警団にも見える。
どちらもいづれは、生まれ変わろうとしているNY街並みの代謝の結果として排除されようとしている刹那的な人たちだ。
イキリ合戦の極地「マンボ」からの、舞台裏でひっそり行われる「チャチャ」
老若男女を巻き込んだストリートでの華やかな「アメリカ」
ユーモアと皮肉たっぷりの楽しい「クラプキ巡査どの」
ひとつひとつが名曲なのに奇跡の集結でアベンジャーズ化する「トゥナイト四重奏」
超ド級の名曲の数々が次から次へと披露され、それぞれがとんでもないスケールでのダンス・演出。
曲のリストにチェックがついていくたびに、物語の内の悲劇が近づいてきて悲しい。

今回のチノめっちゃ良かったな!
ちょっと冴えない感じもありつつ真面目で知的な印象に。それでいてダンスパーティーでのはっちゃも、精一杯頑張ってる感が微笑ましい。
マリアへの想いも寄せつつ街を守りたいと悩む彼と、決闘場に入る際のトニーとの一瞬の邂逅。
その後の展開を知っているのもありドキリとした。

映画としては良かったものの、主演のアンセルに関する報道は怖いほどに触れられずに公開されたというのは間違いない。
真相は知り得ないのでその件についてはどちらの弁護もできないが、公開を控えている作品規模を後ろ盾に、触れるべからず的な構図になっているのでは?と思われても仕方ない。
だからこの話題に触れないわけにもいかなくなる。
スクリーン外の事を考えて映画をみたり、感想書くときに思いを巡らせたりさせないで欲しい。