音楽が語り始める。色がはじけ、感情が踊る。圧倒的な躍動感。映画とは光だなあ、と改めて思わせる照明の技に息を呑みました。
スピルバーグの作品はいつもそうですが、「映画」の魅力がこれでもかと詰まった快作で、うっとりさせられました。
オリジナル作品から続投となったリタ・モレノの役所もとても良かった。少しはマシな世の中になったかと思えば裏切られ、何度も何度も何度も傷ついてきた「被害者」たちが、それでも「わたしたちの場所」を求めて生き続ける、というメッセージを彼女の人生そのものが滲むような深い表現で投げかけてきます。
これは人種問題や性の問題だけでなく、あらゆる社会の闇について考えさせるシーンでもあります。
それ故に、やっぱりアンセル・エルゴートの性的暴行疑惑がすっきりしない形で終わらされてしまっていることがノイズにならざるを得ない部分はあります。
素晴らしい作品であることは揺るぎない一方で、暴力や人種・性差別の悲惨さを訴える映画のメッセージが届くことを妨げる要因をクリアにできなかったことは非常に残念です。