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キャッツの一人旅のネタバレレビュー・内容・結末

キャッツ(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

トム・フーパー監督作。

英国の劇作家:T・S・エリオットの詩集を原作とし、名作曲家:アンドリュー・ロイド・ウェバーが作曲した、1981年ロンドン初演の名作ミュージカル「キャッツ」の映画化で、監督を務めたトム・フーパーにとっては『レ・ミゼラブル』(12)以来2度目のミュージカル挑戦作となっています。

日本では劇団四季による上演でお馴染みの名作ミュージカルの映画版ということで、往年のミュージカルファンにとっては今冬一番の注目作だという方も多いでしょう。私は原作の詩集も舞台版も未見の新参者なので、今回は純粋に1本の「映画」としての感想しか言えませんが…。

まず「キャッツ」初見者にとっては、本作で語られる猫たちの物語はとても新鮮に映ります。個性的なキャラクターの擬人化された猫たちによるファンタジックな競演。天に昇って新たな人生を手に入れることができるたった一匹の猫に選出されるべく、それぞれに事情や個性を持った猫たちによる歌のワンナイトオーディションが繰り広げられます。「キャッツ」の“キャ”の字も知らない初心者には、「キャッツ」がどういう物語でどう結末を迎えていくのか―という初歩の部分を知られただけで大きな収穫でした。

舞台版との比較はできませんが、「映画」としての出来栄えは少なくとも及第点には達しているかと。確かにミュージカルシークエンスが冒頭から数多く盛り込まれている上に、やや単調な印象を受けないこともないのですが、かつての魅力を失い今はすっかり落ちぶれてしまったグリザベラが登場する辺りから尻上がりに面白くなり惹き込まれていきます。グルザベラを演じたジェニファー・ハドソンが披露する魂の熱唱は、『レ・ミゼラブル』のアン・ハサウェイを彷彿とさせる見事なものでしたし、彼女の過去を掘り下げた上での“魂の解放”には感動したお客さんも多かったのではないでしょうか。また、特別ゲストとして出演した歌姫:テイラー・スウィフトによる新曲「Beautiful Ghosts」や、テーマ曲「Memory」を始め代表的ナンバーの数々に聞き惚れる本格派のファンタジーミュージカルに仕上がっています。

顔と手指、足指以外をCGで表現した猫たちの造形は始めこそ不気味な印象を受けましたが、不思議と観ているうちに馴染んできますのでご安心を。ただ、同じくCGで表現した背景、特に地面と猫の接地面が不自然な仕上がりで、また猫ちゃん一匹一匹に注視すると所々で不自然な挙動が見つかります。ほぼ全てをCGで表現することを選択した割には、CGレベルは上出来とは言えないため、その部分で少し“安っぽさ”が出てしまっているのが残念なところです。
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