くるぶし

きみと、波にのれたらのくるぶしのレビュー・感想・評価

きみと、波にのれたら(2019年製作の映画)
3.2
湯浅監督ファンとしては正直いただけない。作家性がほぼ失われていてあまりにも商業的すぎる。

昨今の東宝は庵野監督や新海監督のようにクセ強すぎだけどピカイチの作家性をもつ監督を上手くプロデュースし、
大衆にもわかりやすく、かつ作家性もほぼ失わせないという偉業で特大ホームランを連発してきた。

湯浅監督も前述の監督らと肩を並べられるほどの奇才である。しかしそう毎回プロデュースが上手くいくとは限らない。
ファンとしては東宝に目をつけてもらって嬉しい限りだが、監督の方向性、脚本、キャスティング、全てが少しずつずれていた。

どこかのインタビューで「監督としてクレジットされているが、自分の作品ではないものもある(うろ覚え)」と語っていたが、恐らくこの作品なのではないかと思う。正直そうであって欲しいという個人的な望み。

湯浅監督の醍醐味といえば視覚から感覚に訴える、アニメでしかできない気持ち悪い(いい意味)表現の数々だろう。
元々クレヨンしんちゃんのアニメーターとして活躍しており、クレしんの映画で出てくる特徴的で奇妙なキャラクターや仕掛け、建物は彼のアイデアであることが多い。

そういった中で作家性を爆発させたのが、自身が監督・脚本を務めた大名作「マインドゲーム」だろう。非常に尖ったセンスが画面にほとばしっており、湯浅監督のファンになったのもこの作品がきっかけだ。

「ピンポン」や「夜は短し」は題材と彼の方向性がマッチしており、心地よい気味悪さで観ていて非常にワクワクした。

今作はそんな気味悪さがほぼ感じられない。悲しくなった。まとまりすぎてる。
脚本や演出も違和感あることばかり。監督は映像だけで説明できる技量を持っているのに、やたら説明過多だったり、飽き飽きするくらい鍵となる歌が流れたり。
ただ水の表現に関してはこだわりが見られて唯一湯浅監督っぽさを体感できたのでそこだけは非常に良かった。

GENERATIONSが悪いわけではない。というか誰も悪くない。ただ、合わなかっただけだと思う。

今年、犬王という最新作が公開されるがこれに関してはめちゃくちゃ期待している。ポスターのビジュアルから僕の好きな湯浅監督っぽさが溢れている。

ということでこの作品を観たとしても監督を悪く言わないでください。そしてマインドゲームを見てほしい。あとアニメの映像研も。
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