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ワイルド・ボーイズのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

ワイルド・ボーイズ(2017年製作の映画)
2.5
【『蝿の王』のグロテスクさ100倍!エロス+虐殺】
本作は、ウィリアム・ゴールディングの『蝿の王』の本能的醜悪さを、マンディコお得意のグロテスクな美に落とし込んだ作品だ。なるほど、安易なジェンダーのメタファーに厳しい済藤鉄腸さんがブチキレるのもよく分かる作品だ。端的に言えばガイ・マディンの混沌に安直陳腐なメッセージ性を付加させたような作品だ。

まず、この作品は思春期少年の性の奴隷と変身願望をメタファーにしている。『蝿の王』が文明から隔絶された空間で原始的本能が呼び起こされ、ヒトを野生に還す様を描いているが、本作も同様のアプローチで、男が持つ本能の底を目指して突き進む。

女をレイプした少年は船長に連行されて謎の島に辿り着く。そこで、男性器のような植物から出る精液のようなエキスを吸う。そして、少年たちは各々に島を彷徨う。突然、精液の塊みたいな糸に身体をぐるぐる巻きにされて身動きが取れなくなったりするのだが、何故かもがくわけでもなく、その束縛を楽しんでいるように見える。そして、サノスのようにカラフルな指輪をつけた女に対して奴隷のようについていくのだ。しまいには、少年たちに《女性たるもの》が芽生え始める。

思春期というのは、異性を異星人のように見る時期である。まるで得体の知れないものに、底知れぬ興味を抱き、でもその癖に対して心のやり場がなくなってしまう。それが、暴力に繋がる。しかし、暴力に逃げたところで、性癖の呪縛から解き放たれることができない。女性を支配しているつもりが、完全に女性に支配されている皮肉が本編全体に渡って広がっているのだ。そして、束縛の末に、少年たちが気づくのは、女性という異星人の正体。女性への理解が、少年たちに芽生える女性の感情に投影されているといえよう。

まあ、ベルトラン・マンディコは点で観ると、カッコイイ絵面が多く素敵なのだが、線で観た時に、途端にエロスが陳腐でどうでもイイものになってしまう問題多き監督だと分かった。最近のカイエ・デュ・シネマとは相性が良いと思っていたのですが、今年のベスト1は意見が合わなかった。日本ではこの前、アンスティチュ・フランセで特集上映されていたが、今度の春先の特集では上映されるのだろうか?もし、上映されることがあれば是非お試しあれ!
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