これ、まさかのスザンネ・ビア監督作品である。芝居のナマ感は健在で、終末SFスリラーのフォーマットの中で登場人物達の感情が一筋縄ではいかない形で生っぽく息衝いている。ざっくり言うと非常にエモい。
トレント・レズナーの音楽も相変わらず不穏、それにしてもスザンネ・ビア監督作品にトレント・レズナーの曲が付く時が来るとは。というかまさかスザンネ監督がこういう映画を作るとは。
『人を自死に追いやる存在』=『ドラマを転がす手段』は目的ではなくて、あくまでドラマをあぶり出す為の手段でしかない。だからこの映画は設定の説明には興味が全く無い。「ハプニング」が嫌いな方にはお薦めしません。
ジャンル映画にありがちな単純な嫌な奴っぽかったジョン・マルコヴィッチさえも決してそうはならず、主人公とサシで酒を酌み交わすシーンさえあるのが良い。
サンドラ・ブロックはやはり素晴らしい。「ムーンライト」に「ザ・プレデター」とよく分からないフィルモグラフィになりつつあるトレヴァンテ・ローズは今回も良い味を出している。少ない出番でもサラ・ポールソンはしっかり印象を残していく。「アリータ」の主演女優もタフさと色気を醸し出す。
過去の顛末と現在の川下りを交互に描いていく構成も良い。
主人公達に危害を加える人々の設定が雑で不用心なのは残念。