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テッド・バンディのsomaddesignのレビュー・感想・評価

テッド・バンディ(2019年製作の映画)
5.0
恋人目線でテッド・バンディを描いてみた

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多分世界一有名な殺人鬼。
「羊たちの沈黙」のバッファロービルのモデルの一人になった事でも超有名。

原題: Extremely Wicked, Shockingly Evil and Vile
(極めて邪悪、衝撃的に凶悪で卑劣)
実際の裁判において、裁判長がテッド・バンディに死刑を言い渡す際の判決文の中に含まれた文言。裁判長をして死刑を言い渡す際に「君ならいい弁護士になれた」「法廷で活躍する姿が見たかった」と言わしめ「君に対して敵意はない」とまで付け加えるほどのカリスマ性。

テッドの恋人リズことエリザベス・ケンドールによる回顧録「The Phantom Prince: My Life with Ted Bundy」を下敷きにした映画化。テッド・バンディの半生や犯罪録じゃなくて、彼に振り回された女性視点によるシリアルキラーの実像やカリスマ性を立体的に描く感じ。不思議なことにアメリカを初め諸外国ではNetflixによる配信に留まっているのに対して日本では劇場公開。なんにせよ劇場でみられるのはありがたい。

これまで何度も映像化されてるし、日本でも「世界仰天ニュース」で再現ドラマ化してるので、映画ファンならずともご存知の人も多いハズ。観客の多くが凄惨な事件と犯人を知ってて観るので、冒頭キッチンに立つテッドがさりげなく包丁をぶら下げてる姿でもうゾッとした。

これまで語られてきた、残忍で冷酷な犯罪を行える悪魔的な側面より、魅力的な隣人くらいの距離感で描かれてるのが斬新。有名な犯罪者とはいえ、当時の彼の友人や恋人からすればにわかに信じられない話だったハズで、彼らの心の変わりよう……特に恋人リズの愛する人を信じたいのに信じられず引き裂かれていく様を描こうとしてるように見えた。

犯罪そのものより逮捕された後の映像化も珍しい。TVで裁判中継を見てた人からすれば、凶行以上に逮捕後の姿の方が馴染みがあるし、若い世代でテッド・バンディを知らない観客が見れば、何が本当でどれが嘘か分からない。観客もまたテッド・バンディに翻弄される作りでもあるのか。

実際、監督が若い世代がテッド・バンディを知らないことに危機感を抱いたのも今作が作られる動機の一つだったそう。監督の二人の娘たちはまさにテッドに標的された女性達の年代ってこともあり「感じの良いイケメン白人男性だからって簡単に心を許してはいけない」と警鐘を鳴らす意図もあったとか(監督の二人の娘たちは図書館と法廷ギャルのシーンで各々カメオ出演も果たしている)



リズ演じたリリー・コリンズが黒髪中分けロングのよく似合う美人っぷりが良かったし、いかにもテッド・バンディの好み。犠牲者たちに共通する姿でもあるわけで、憔悴してく姿がジワジワと殺されてるみたいで痛々しい。
ザック・エフロンが予想外にテッド・バンディ激似。見てると吸い込まれそうな目ヂカラがそっくり。彼の話だけ聞いてると思わず信じてしまいそうになる魅力的な佇まい、知己に富んだ語り口、ワイルドにも優男にも見えるイケメンっぷりでウットリ&ゾワゾワ。

監督は犯罪ドキュメンタリー作品で高い定評のあるジョー・バリンジャー監督。近作でもテッド・バンディを扱ったNetflixオリジナル「殺人鬼との対談:テッド・バンディの場合」で監督を務め、劇映画とドキュメンタリーの双方で殺人鬼の実像に迫ったことになる。

刑が確定して執行されるまでの数年間は、同様の異常心理犯罪の捜査協力してたそうで、それなりに人の役には立ったのかしら。
噛み癖や異様な性癖〜異常に高いIQまで「ハンニバル」シリーズを筆頭に後のサイコスリラー・サスペンスへの影響ハンパなし。死してなお色濃く影を残すあたりもおっかない。


5本目
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