さよこ

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのさよこのレビュー・感想・評価

5.0
【リリーのファンになって帰ってきた🫶】
実話ベース&レオ様の最新作。観るっきゃない!

🐺全体の感想
めっっちゃ面白かった!約3時間半の長丁場にも関わらず無駄なシーンは1つもなくて最後まで先の展開に釘付けだった。レオ様の演技は言うまでもなく、妻役の女優/リリー・グラッドストーンの静かなのに存在感のある演技も最高だった。あの目でじっと見られたら全部を見透かされた気持ちになってドキマギするわ。

🐺台詞
悪いヤツほど親しげに振る舞う、とは良く言ったもんで、まさに悪の親玉ヘイルが『あなたのため〜』『親友として〜』と連発していて、詐欺師のやり口…!と思った。悪い人ほど良い人に見せるのが上手よね。

🐺音楽
要所に出てくるウッドベースぽいシンプルな曲がとても良い。この街に忍び寄る足音のよう。

🐺パンフレット
まさかのパンフレット販売なし。売り切れとかじゃなくて元々パンフを制作してないらしい…せめて入場特典でポストカードやポスターがあれば良いのに…なぜ…Apple Original Filmsだから…??😿

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⚠️この先、ネタバレあります⚠️
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🐺脚本
アーネストがモーリーの体調を気遣い、献身的に看病しているだけに💉の中身をアーネストが知っていたのかが曖昧なまま物語が進む。いや流石に分かってるでしょと思いつつも、彼は妻を本気で愛してそうだし、観ているこちらとしてもなかなか確証が得られなかった。そして裁判のシーンもキングの影響力がどこまで浸透しているのか分からずで、最後まで先の見えない展開だった。面白かった。

🐺アーネスト(レオ様)
もともとレオ様は、この事件を追う捜査官役でオファーされたんだけど、脚本を読んでアーネスト役を熱望し、この役に収まったんだとか。たしかにレオ様以外の配役は考えられないと思えるほどのハマり役。妻を愛する気持ちと、叔父さんからの指示の狭間で、葛藤するというよりも思慮の浅さで矛盾した行動を違和感なく演じていて、流石レオ様って感じだった。アーネストは、オセージ族の歴史や言葉を覚えたりして、意外に好感が持てた。今回は身近な親族が悪の親玉だっただけで、もし周りの人たちが善人だったらアーネストもきっと善行を繰り返していただろう。彼の少年ぽさ、計算高くない性格をモーリーは好んだのかもしれない。

🐺モーリー(リリー・グラッドストーン)
現地の人にしか見えないほど、大地がとても似合ってた。自分が惚れた男のせいで家族が殺されるのってどんな心境なんだろうか…この映画の演出で好きなシーンの1つは裁判のときに取り乱さないところ。泣いたり、喚いたりせず、裁判の動向をじっと受け止めているところにオセージ族の気位の高さを感じた。最後に夫のことを現地の言葉でコヨーテ呼ばわりしたのはゾクっとした。

🐺ヘイル(ロバート・デニーロ)
現地の言葉を覚えた動機は、きっとアーネストとは違うものだったんだろうな。おじさんは自分がこの街を掌握するために言語を覚え、アーネストは愛する人を理解するために覚えたように思える。終盤、だんだん自分の影響力が街に及ばなくなってきたときの少し切なげな顔が印象的だった。彼はビジネスの基本である『最初に与え、あとから得る』をしっかり踏襲していて、彼のなかではきっと何かを奪っている感覚はなかったんじゃないかな。相応のものを与えているから当然の見返りをいただいていると思ってそう。ヘイルに罪の意識がないから、当然、アーネストにも罪の意識は伝播しない。何なら『インディアンの寿命は我々より短い』と先手を打って言い聞かせているから、アーネスト自身も矛盾した行動に罪悪感を抱かずにいたんじゃないかな。そういうものだと納得しちゃったんだろうな。最初は愛する人に毒を盛るサイコパスかと思ったんだけどそんな上等なものじゃなくて、たんに頭が賢くないだけだろう。

🐺その他いろいろ
・アーネストが戦地で炊事担当者だったのもなんだか納得。口のうまい敵と接したら簡単に寝返りそうだもんな。
・1920年代から変わらぬアメリカ至上主義…
・無能力者がなんのことかわからなくてHUNTER×HUNTERかと思った。違った。
・叔父さんの頭の良さを、ポンコツのアーネストが帳消しにしちゃう場面がたびたびあって笑った
・大富豪なのに自然と調和しながら生きてるインディアンたちの気高さが格好良かった。
・凛とした美しさがどんどん失われていくのつらい
・ホエールの俳優さん出てる!復帰おめでと!
・保安官役の人をマッド・デイモンの弟だとずっと思ってた。違った。
・幼なじみが元旦那っていうのもホントか怪しいぞ
・あなたは親友じゃないとバッサリ。魔法がとけた
・モーリーの『My skin, My Color』も好き
・モーリーの心は、静かで、そして深い。

🐺余談1
実話を詳しく解説しているサイトがあったのでここで紹介。映画で理解しきれなかった部分が補完できて良い。
https://news.yahoo.co.jp/articles/7d8d8db5a9a204ec63000ba5ee0893cb83bb97ad

🐺余談2
強烈に印象に残った台詞が1つあって『神様が俺をそう作ったんだから仕方ない』というもの。
これまで海外の人の自己肯定感の高さが不思議だったんだけど、この台詞を聞いて一気に視界が開けた気がした。神様の存在を信じているから''自分の存在は神様に与えられたものだ''という自負になり、神様に存在が許されているからここにいるというアイデンティティの確立にも一役買っている。両親(=人間という不完全な生き物)から生まれたんじゃなくて、神様(=全知全能の完璧な存在)が自分を生み出し、両親を経由してこの世に生を受けたという理解。なるほど、それは圧倒的に自己肯定感が爆あがりするなぁ。そう思ったら他人にも優しくなれる気がする。どんなに嫌な人でも『こんな人でも神様から存在を許されてるんだ…』と思ったら受け入れざるを得ないもんね。あと凄い意地悪な人がいても『天罰は神様がするから、人間の私は何もしないで放っておこう』て割り切れそう。あーだから宗教の名の下に戦争が始まっても、最後に良し悪しを決めるのは神様だから、とりあえず開戦して勝ったほうが神様の意向だ!みたいになるのかな。ふむふむ、うーん、宗教の万能感って凄い。
さよこ

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